パブリックコメント

 パブリックコメント手続き、パブリックコメント制度(PC制度)、または意見公募手続制度ともいう。通称はパブコメである。住民参加は民主主義の根幹である。複雑化する国家の政策決定過程に、国民の意見を反映させる仕組みとして、パブリックコメントは導入された。国政にかぎらず、地方自治でも住民の意見を求める機会が増え、住民自治のあり方を問うことになった。行政は作成した政策原案を、市民に公表し意見を募ることで、広く多様な見解を政策に活かすことができる。不特定多数の公衆の意見を考慮し、最終的な意思決定に繋げていくという一連の手続き、もしくは一連のプロセスが、パブリックコメントである。もともと日本の行政手続法(平成5年法律第88号)におけるパブリックコメントの目的は、「行政運営の公正さの確保と透明性の向上」にあった。行政機関が命令等を定める際には、「当該命令等の案及び関連資料をあらかじめ公示し、意見提出期間等を定めて広く一般の意見を求めなければならない」とされ、提出された案については「意見を十分に考慮しなければならない。」と定められた。一方、地方公共団体に対しては、「行政手続法の趣旨にのっとって必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」とするにとどまったが、パブリックコメントを採用するか否かによって、住民自治に対する自治体の姿勢が顕著に分かるため、かえって国政よりも注目されることがあった。現在では政令府省令の原案には、誰でも意見提出ができる。パブリックコメントの専用ウェブサイト(e-GOV)が開設されたことで、一覧化された募集案件がみつけやすくなり、結果の閲覧も容易となった。パブリックコメントの背景には、政策決定過程への不信があった。政策が諮られる審議会の委員は、諮問事項に関係する利害関係者とその団体役員ばかりで構成され、しかもその審議過程が不透明だったからである。パブリックコメントは、利害関係者以外に政策参加の手続きを用意したという点で画期的であった。審議会委員のポストを公募制にする方法まで出現し、政策への民意の組み入れ方にはさらなる配慮がなされるようになった。ただ、パブリックコメントが民意を反映し、政策決定の公正さを担保しているとまではいえない。その機能の是非については、引き続き検証が必要である。
(川野祐二)