都市開発

 都市の成長・発展とともに、都市開発の目的・課題は変わってきた。人口が急増し、都市化が急激に進行した高度経済成長期には、インフラ、公共施設等都市施設の量的供給が最重要課題であったのに対し、成熟社会の現在は、質の高い都市空間の創出に繋がる都市のリノベーションや、老朽化した社会ストックの維持・更新が求められている。今日の都市開発においては、かつてのような機能性や効率性の追求だけでなく、ゆとりや個性、感性、多様性、人間性といった要素も重視されている。また、新しい時代潮流により、都市開発の方向性も変化しつつある。人口減少社会に入り、都市外延部の縮小・撤退(縮退都市化)、都市内部のスポンジ化(空地・空き家[低未利用地]のランダムな発生)が進行する今日、居住や都市機能の立地誘導や、公共施設、インフラの集約化・減量化によるコンパクトな都市構造への転換が急務となっている。コンパクト・シティ化は、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable DevelopmentGoals)に掲げる持続可能な都市、低炭素都市への転換という観点からも要請されている。気候変動に起因する自然災害の頻発・激甚化や南海トラフ等地震災害リスクの拡大を受けて、都市排水機能の改善、建物の不燃化・耐震化など、強靭な防災都市づくりも、都市開発の重要な課題となっている。他方では、都市の成長力強化という観点から、都市への新たな開発・更新投資が求められている。国際競争力の向上に向け、都心(都市再生特別地区)における国際的な業務拠点の形成や、臨空・臨海地区での国際物流拠点の整備・再整備をすすめる必要がある。また、Society5.0の実現に向け、都市において革新的技術(人工知能[AI]技術、自動運転、ロボット、スマートホーム技術等)の社会実装の推進も期待されている。また、新たな都市インフラとしてのローカル5G(第5世代移動通信システム)の導入によるスマートシティ化の促進も今後重要な課題となる。さらには、ライフスタイルや働き方の多様化を受けて、サテライト・オフィスや起業拠点(シェア・オフィス等)等の整備もすすめねばならない。一方、都市開発・経営の推進手法・主体も多様化しつつある。各分野で従来の官(政府・自治体・公営企業)主導から、公民連携PPP(PublicPrivate Partnership)による民間活力の活用へとシフトしつつある。PFI(Private FinanceInitiative)、指定管理者制度、公設民営(DBO:Design Build Operate)方式、コンセッション(公共施設等運営権)方式、包括的民間委託など、さまざまなスキームのもと、今日都市施設の整備・管理がすすめられている。また、個別施設だけでなく、特定の地区全体のエリア・マネジメントも、海外のBID(Business Improvement District) をモデルに導入された負担金制度等を活用し、民の手ですすめられようとしている。
 今日、都市住民も、公共施設・事業計画に意見を表明するだけでなく、まちづくりの担い手として都市開発・経営に積極的にかかわることを期待されている。前述のエリア・マネジメントにおいては、事業主・地権者等とともに、地区住民、地域団体等も参画を求められている。地区によっては、自治会がエリア・マネジメント法人のなかで中心的役割を担っている。このほか、道路、河川、港湾といった都市施設・インフラについても、近年、協力団体制度が設けられ、住民、地域団体、NPO等がその維持・管理に関与することも期待されている。
(今井良広)