東京オリンピック・ボランティア

 ボランティアはオリンピック大会の開催に重要な役割を果たし、ホストコミュニティに多大な影響を与える。平成12(2000)年のシドニーオリンピックでは7万人、平成20(2008)年の北京オリンピックでは10万人、平成24(2012)年のロンドンオリンピックでは7万人が参加し、令和2(2020)年の東京オリンピック・パラリンピックでは、大会ボランティアとシティキャスト合わせて11万人以上の活躍が期待された。大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他大会関連施設等で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアサポート等、大会運営に直接携わる活動を行う。シティキャストは、競技会場が所在する自治体で、観光・交通案内などを行う。オリンピックの主要なサービス提供者はボランティアであるため、ボランティアによるサービスのレベルは、イベントの成功に直接影響する。オリンピック組織委員会は、ボランティアを募集、選別、選抜、訓練するために何年も費やす。2012年ロンドンオリンピックのボランティアは、約700万時間の労働時間を生み出したとされる。オリンピックのボランティアは、無形かつ文化的なオリンピックレガシー(遺産)としても注目されている。オリンピックのボランティア活動が成功すれば、さまざまなレガシーを中長期的にホストコミュニティに残すことができる。たとえば、個人が培ったスキルのコミュニティへの還元、コミュニティにおける市民のボランティアに対する積極的な態度、他のボランティア活動への参加率とレベルの向上等に繋がる。このレガシーをコミュニティに残すためには、イベント中のボランティア体験の質が重要である。一部の人にとって、東京オリンピック・ボランティア活動ははじめてのボランティア活動であり、その参加動機もさまざまである。従って組織委員会は、ボランティアの活用効果とともに、ボランティア自身の満足度を高めるボランティアマネジメントを慎重に設計する必要がある。
(島岡未来子)