動機づけ

 人が何らかの原因や目的によって行動を起こす際に働く心理的過程を指す。類語としては、「やる気」「モチベーション」などがあげられる。企業組織は、その目標を達成するために、労働者の労働意欲を最大限に引き出すような動機づけを起こすマネジメントが求められる。古典的な理論では、組織が個人を惹きつけるものを「誘因」、個人が組織のために努力することを「貢献」としており、組織はつねに「誘因」≧「貢献」という図式が成り立つようにしなければならないとしている。そうでなければ、労働者はその企業組織を辞めてしまうことになる。「誘因」は金銭的報酬が想像されやすいが、そのほかにも人間関係や仕事に対するやりがいも含まれる。動機づけに関する代表的理論としては、Maslow, A. H.( マズロー)の「欲求階層説」、McGregor, D. M. (マグレガー)の「X理論とY理論」、Herzberg, F(. ハーズバーグ)の「動機づけ―衛生理論」、Vroom, V. (ブルーム)の「期待理論」などがあげられる。このように研究の世界では動機づけについてさまざまな解釈を与えている。ボランティア・会員の動機づけにもさまざまな解釈がある。ボランティアの行為は自分の利益にならないことであっても他人のために働く「利他的動機」が基本とされている。宗教の教義や精神に基づく慈善的行為も利他的な行動とされる。一方で、ボランティアには「利己的動機」もあるとされ、その動機づけの解釈として、「消費的動機モデル」と「投資的動機モデル」が代表的である。「消費的動機モデル」は、非営利組織やボランティア団体の理念に共感し、それに準ずる活動を行うこと自体が参加者にとっての効用(誘因)になるという考え方である。「投機的動機モデル」は、非営利組織やボランティアでの活動を知識・技能・経験を習得する場として捉え、そこで蓄積された人的資本が将来の就職や賃金上昇にプラスに働くという考え方である。非営利組織はミッション本位の団体であり、かつ非営利であるために、多くの賛同者をえて活動を継続させることになる。非営利組織のリーダーは活動を始めた動機を語ったり発表することで、共感を生むことによって、賛同者たるボランティア・会員や寄付者を増やすことにも繋がっていく。
(菊池 遼)