適法性監査

 監事が行う監査のうち、理事の職務の執行について、法令・定款を遵守しているかどうかを監査することである。監事は、一般社団法人においては社員総会、一般財団法人においては評議員会の決議により選任される(一般法人法63Ⅰ、177)。監事の職務は、理事の職務の執行を監査し(同法99Ⅰ、197)、理事が作成した計算書類および事業報告書ならびにこれらの附属明細書を監査(同法124Ⅰ、199)し、監査報告書を作成する(同法99Ⅰ)ことである。さらに理事会、社員総会・評議員会への報告義務がある(同法100、102)。この監査には「業務監査」と「会計監査」がある。「業務監査」は理事の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することである。また、「会計監査」とは理事の会計業務の執行、つまり、計算書類およびその附属明細書を監査することである。業務監査、会計監査は、理事の職務の執行が適法か否かを監査する「適法性の監査」と理事の職務の執行が妥当か否かを監査する「妥当性の監査」に分けることができるが、監事による監査の権限と義務は、業務監査、会計監査の「適法性監査」にかぎられていると一般的には解されている。ただし、ここで注意すべき点は、法令には善管注意義務も含まれているので、理事の経営判断に係る事項についても、善管注意義務違反がないかどうかを監査する必要があるということである。理事の職務執行に関する適法性の監査では、監査の結果として、理事の競業取引、理事と法人間の利益相反取引、法人が行った財産上の無償の利益供与、法人と子法人との通例的でない取引、また、子法人に関する職務を含めて、不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実および善管注意義務違反がないかどうかについて、意見表明されることになる。
(白土英成)