定款

 一般社団・財団法人、NPO法人等の基本的規則およびその内容を記載した書面をいう。整備法によると、前民法の財団法人の寄附行為には、この基本的規則の意味のほかその設立行為をも意味していたが、一般法人法においては、一般社団・財団法人を通じて、その基本的規則を定款と称することに統一された。一般社団法人の設立には、社員になろうとする2人以上の者(設立時社員)、一般財団法人の設立には、設立者(2人以上の場合には、その全員)が定款を作成し、これに署名または記名押印する必要がある(一般法人法10Ⅰ、152Ⅰ)。一般財団法人の場合、設立者は、遺言によっても設立の意思表示ができるが、その場合には遺言執行者は該当遺言の効力が生じた後、遺言により定められた事項を記載した定款を作成し、これに署名または記名押印する(一般法人法152Ⅱ)。なお、定款は、電磁的記録をもって作成することができる(一般法人法10Ⅱ、152Ⅲ)。定款の記載事項には、必要的記載事項(絶対的記載事項)、相対的記載事項および任意的記載事項がある。必要的記載事項とは、定款にそのすべてを記載または記録しなければならない事項で、その1つでも記載を欠くと定款の効力が生じないこととなり、法人の目的、名称等がその例である(一般法人法11Ⅰ、153Ⅰ)。なお、公益認定を受けるためには、会計監査人を置く旨の定め(一般法人法60Ⅱ、170Ⅱ、公益認定法5⑫、公益認定法施行令6)、理事会、監事を置く旨の定め(一般法人法60Ⅱ、61、公益認定法5⑭ハ。社団法人のみ)、不可欠特定財産についての定め(公益認定法5⑯。該当する財産がある場合のみ)、公益認定の取消し等に伴う贈与についての定め(公益認定法5⑰)、残余財産を他の公益法人等に帰属させる旨の定め(公益認定法5⑱)について、定款に記載する必要がある。相対的記載事項とは、定款に記載しなくても定款の効力には影響はないが、定款に記載しなければその効力を生じない事項(一般法人法12、154)である(たとえば、社員の経費支払い義務、理事および監事の任期の短縮、理事会の決議の省略。一般法人法27、66、67、96)。任意的記載事項とは、法令に違反しない範囲で任意に記載することができる事項(一般法人法12、154)であるが、記載がなくても定款の効力に影響はない。記載したものを変更するときは、定款の変更の手続き(法人法146、200)を必要とする。定款の変更は、一般社団法人では社員総員の特別決議(法人法146、49Ⅱ④)による。一般財団法人では目的および評議員の選任解任の方法を除き、評議員会の特別決議(一般法人法189Ⅱ③)によるが、定款の定めに基づき、または裁判所の許可をえて目的・評議員の選任解任の方法についても、評議員会の決議によって、定款の定めを変更することができる(一般法人法200)。一般社団・財団法人の設立時の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない(一般法人法13、155)。公証人による認証を必要とするのは、定款を公証人が認証することにより、定款作成の事実が真正であることおよび関係法令に照らして内容の適正性を審査し、その明確性を確保することにより、後日の紛争と不正行為を防止するためである。公証人による認証は、定款の効力発生の要件であるので、認証を受けていない場合には、その定款は無効である。公証人による定款の認証が要求されるのは原始定款のみであって、一般社団・財団法人の成立後の定款変更については要求されない。
(渋谷幸夫)