中間法人

 法人類型の分類基準として、団体構成員への利益の分配・不分配を分かつ「営利性」基準と、公益・非公益を分かつ「公益性」基準という両軸の組合せにより、「公益・非営利」など4つの領域を導くことができる。中間法人とは、広義には、「非公益・非営利」目的の団体のうち法人格を有するものをいう。狭義には、平成13(2001)年6月15日、法律第49号として公布され、平成20(2008)年12月1日公益法人制度改革関連三法施行により廃止された同名の法律を指す。同法で中間法人は「社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団」(中間法人法2①)と、共益性が明示されていた。狭義の中間法人法の制定を促した要請として、1つには日本の非営利法人法制の「間隙」を可能なかぎり充塡すること、2つには公益法人制度の純化を図ることがあげられる。前者の「間隙」は、公益法人と営利法人の中間領域とも表現されてきたもので、民法に基づく公益法人格を取得できなかった非公益・非営利目的の団体について、法人格取得(法人化)の道を開くことを意味する。後者の「純化」とは、昭和47(1972)年以前、行政庁が「公益に関する」の概念を広く解釈し、特定多数者の利益を主目的とする団体も公益法人設立許可がなされてきた結果、公益性の希薄な法人が公益法人として多数存続しており、それらを転出、移行させる受け皿として中間法人制度が要請されてきたことを意味する。中間法人法の立法過程で議論の結果、公益法人からの組織変更に係る規定は制定を見送られ、この要請は同法では達成されず、公益法人の制度改革の成果に持ち越された。
 中間法人の設立・活用状況を明らかにした平成18(2006)年度全国調査結果(初谷勇[2012]『公共マネジメントとNPO政策』ぎょうせい)によれば、中間法人法は、同窓会、職域団体(特定職能・資格者団体、業界団体等)や、自治会等の地縁的団体など共益(非公益)・非営利団体の法人化に道を開いたほか、定款に定める目的に特段の制限がないことから、公益事業を積極的に行う団体の法人化(公益志向型)や、営利法人の事業活動を補完、支援する中間法人の設立(営利補完型)も促進した。特に、企業や銀行による資産の流動化・証券化取引において、流動化の対象資産の譲渡人(オリジネーター)等から独立した公認会計士等が社員・理事となり、オリジネーター等に基金を拠出させて、有限責任中間法人を設立し、その中間法人が発起人として会社型のSPV(Special Purpose Vehicle)を設立し、SPVの持分を保有することにより、オリジネーター等のSPVへの出資とSPVに対する議決権を分離し、対象資産やSPVの倒産隔離を図る活用法(中間法人ストラクチャー)が著増した。中間法人は、廃止までの7年余りの間に4,000法人を超えて設立された。公益法人制度改革関連三法の施行により中間法人法は廃止され(整備法1)、有限責任中間法人は、当然に一般社団法人に移行し(同法2)、無限責任中間法人は、特例無限責任中間法人として存続するが(同法24)、1年以内に、総社員の同意(同法31)、債権者保護手続き(同法32)を経て、特例無限責任中間法人の解散登記と、移行後の一般社団法人の設立登記をすることにより一般社団法人に移行した。非営利法人法制の「間隙」を充塡し、普通法人なみ課税とされた中間法人は、新公益法人制度では、旧民法法人とともに一般社団法人のいわば前身として、その法制・税制に示唆と影響を与えたといえる。
(初谷 勇)