ほかに、理事は委任者である法人のため、法令、定款、社員総会等の決議を遵守し、忠実にその職務を行わなければならないとする忠実義務を負う。法人の利益に相反する行為を行うことは忠実義務に反するため、理事が法人の事業の部類に属する取引を行うこと(競業)および法人と利益が相反する取引(利益相反取引)を行うことは禁じられている。ただし、事前に社員総会等所定の決議機関の承認を受けた場合については、このかぎりではない。また、理事が法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときには、監事(監事を置いていない一般社団法人にあっては社員)へ報告をしなければならない(報告義務)ことも、法人への忠実義務の1つであると解される。
(本郷順子)