チャリティ実務勧告書(英)

 イギリスチャリティでは、チャリティ会計の実務指針である「実務勧告書」(SORP)が公表されている。SORPは、財務報告評議会(FRC)が取り組んでいない特定の産業、セクターあるいは領域における特定の要件や従事する取引について、会計基準および法規制の要件を補完する役割を担っており、チャリティに関するSORPはチャリティに特有の会計を取り扱っている。チャリティのSORPは財務諸表と理事者の年次報告書の形式と内容に関する詳細な要請とガイドラインを設定しており、特に発生主義に基づいた財務諸表(accruals accounts)を作成するチャリティに勧告を行うものである。1980年代初頭、イギリスのチャリティ会計と報告について、その質や首尾一貫性(consistency)を改善する努力が必要であると認識されてきつつあったが、当時の基準設定団体であった会計基準委員会(ASC)は、必要に応じて報告基準をすべての組織(非営利組織も含めて)に適用することを意図していた。このようななか、1981年に、イングランド・ウェールズ勅許会計士協会(ICAEW:The Instituteof Chartered Accountants in England andWales)のもとでBird and Morgan-Johnsの研究報告書『チャリティの財務報告(FinancialReporting by Charities)』が公表された。この報告書は、当該領域における研究の先駆けとなったといわれている。このBird and Morgan-Johnsの研究報告書に応える形で、ASCは1982年に作業部会を設立した。当該部会は、特にチャリティの年次報告書の有用性を高めるための方法を開拓すること、当時採用されている財務会計と報告書の多様な実務を減少するための可能性を調査することを目的としていた。そ議資料『チャリティの会計(Accounting byCharities)』と1985年の公開草案第38号『チャリティの会計(Accounting by Charities)』として公表され、最終的に、1988年にASCによってSORP第2号『チャリティの会計(Accounting by Charities)』が公表された。この1988年のSORPがチャリティに関する最初のSORPとされ、チャリティの会計規制の新しい手段であり、特定の産業やセクター内で首尾一貫した会計の取り扱いのために会計と報告の勧告を行うものであり、また会計基準や他の法律、規制要請を補足するものであった。  その後、チャリティのSORPは1995年、2000年、2005年、2014年、2019年と改訂された。2015年のSORPはそれまでのSORPと異なり、国際財務報告基準(international financial reportingstandards)の影響を受けており、FRS102SORPとして公表された。FRS102SORPがこれまでのSORPと異なっている大きな点は、財務諸表の1つである財務活動計算書の項目が簡便になったことや、「理事者の年次報告書と財務諸表の目的」が、受託責任の履行だけではなく、意思決定に有用な情報の提供について触れている点である。
(兵頭和花子)