チャリティ(英)

 イギリスにおける非営利組織の1つであり、非営利活動を行う組織の中心的な存在である。イギリスでは、貧困対策として、1601年にエリザベス救貧法(the act for the reliefof the poor)と公益ユース法(the statute ofcharitable uses)が制定された。これらは、チャリティを規制・管理する現在のチャリティ法(The Charity Act)の原型である。チャリティ法はコモン・ローの法的環境のもとで形成され、チャリティの定義は公益ユース法の前文がもとになっていた。また、公益ユース法とともに公益の基準とされているのが、1891年にチャリティの公益性が争われた裁判である。ペムセル事件と呼ばれるが、この裁判で、裁判官のマクノートン卿が4つの基準(貧困の救済、教育の発展、宗教の発展、コミュニティの便益に資する活動)を提示し、それがチャリティの基準となっていた。その後、1958年にレクリエーションやレジャーのための施設が社会福祉を目的とするのであればチャリティとして認めるといった公益レクリエーション法(the recreational charitiesact)などチャリティ関連の制定法が存在していた。しかし、その後、チャリティの数や種類が増加し、また、チャリティへの寄付の増加によって、チャリティは公衆に対して入手可能な情報を提供するという責任や、乱用に対する警戒、基準の明確性などの必要性から、チャリティの監督に関する調査を行い、報告書がまとめられ、監督についての枠組みや、改革の必要性が認識された。またチャリティ委員会の継続性が必要であり、そこには委員会の権力の増強や税の優遇制度についての再考が必要となった。そして、2006年のチャリティ法によって、チャリティが成文法の法律によりはじめて定義されたのである。そこではチャリティとは、「チャリティ目的のためだけに設立された組織であること」、「高等法院(high court)の裁判権の及ぶ範囲内(すなわちイングランドとウェールズ)に存在すること」という2つの要件を満たす組織であると規定されている(2011年チャリティ法に引き継がれている。)。また、チャリティとしての活動を希望する団体は、チャリティ委員会に申請し、認定を受け、チャリティとして登録される。この登録されたチャリティ(registered charities)を一般的にチャリティと呼んでいる。イギリスにおけるチャリティの政治運動について制度的な規制がある。そのうちの1つがロビイング活動についてである。チャリティ法においては、チャリティはその目的が政治的目的である場合は、チャリタブル目的として認めていない。しかしながら、チャリティ目的の遂行の手段であれば、許容されている。
(兵頭和花子)