地方公共団体財政健全化法

 地方公共団体は、健全な財政を維持することが求められているが、一部の自治体の著しい財政悪化が明らかになったように、従前の制度では事態が深刻化するまで状況が明らかにならないという課題があった。そのため、地方公共団体の財政状況を統一的な指標で明らかにし、財政の健全化や再生が必要な場合に迅速な対応をとるため「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(健全化法)」(平成19年法律第94号、平成21年4月全面施行)が定められた。地方公共団体の財政再建制度は従前、「地方財政再建促進特別措置法(昭和30年法律第195号、旧再建法)」による赤字の公共団体に対する財政再建制度と地方公営企業法(昭和27年法律第292号)による赤字企業に対する財政再建制度が設けられていた。しかし、これまでの制度には分かりやすい財政情報の開示や早期是正機能がないなどの課題が指摘され、財政指標を整備してその公表の仕組みを設けるとともに、地方分権をすすめるなかで財政の早期健全化および再生のための新たな制度を整備することが提言され、健全化法の整備に至った。
 健全化法を旧再建法と比較すると、①「財政健全化の仕組み」は、旧再建法においては財政再建団体の基準しかなく、早期是正を図る機能がなかったが、健全化法においては財政再生基準の前段階として早期健全化基準を設け、自主的な改善努力による財政の早期健全化を促すものとした。②「対象となる会計」は、旧再建法では一般会計を中心として、公営企業や一部事務組合・第三セクターなどの経営状況が考慮されていなかったが、健全化法においては公社や第三セクターの負債や赤字についても明らかにし、地方公共団体の財政の全体像を明示した。③「財政状況を判断する方法」は、旧再建法では単年度の現金収支(フロー)の指標のみで、ストック(負債等)の財政状況に課題があっても対象とならなかったが、健全化法では公社・第三セクター等を含めた実質的負債によるストック指標である「将来負担比率」を導入した。④「情報開示」は、旧再建法では財政情報の開示や正確性を担保する手段が不十分であったが、健全化法では監査委員の審査・議会報告・住民への公表を義務化し、情報開示を徹底した。⑤「公営企業の経営」は、旧再建法では早期是正を図る機能がなかったが、健全化法においては、「資本不足比率」を用いた経営健全化の仕組みを設け、早期是正を図れるものとした。健全化法における健全化判断比率については、①実質赤字比率、②連結実質赤字比率、③実質公債費比率、④将来負担比率、としている。地方公共団体は、毎年度、健全化判断比率(①〜④)を監査委員の審査に付したうえで、議会に報告し、公表しなければならない。そして、健全化判断比率のいずれかが早期健全化基準以上である場合には「財政健全化計画」、再生判断比率(①〜③)のいずれかが財政再生基準以上である場合には「財政再生計画」を定めなければならない。
(鈴木克典)