健全化法を旧再建法と比較すると、①「財政健全化の仕組み」は、旧再建法においては財政再建団体の基準しかなく、早期是正を図る機能がなかったが、健全化法においては財政再生基準の前段階として早期健全化基準を設け、自主的な改善努力による財政の早期健全化を促すものとした。②「対象となる会計」は、旧再建法では一般会計を中心として、公営企業や一部事務組合・第三セクターなどの経営状況が考慮されていなかったが、健全化法においては公社や第三セクターの負債や赤字についても明らかにし、地方公共団体の財政の全体像を明示した。③「財政状況を判断する方法」は、旧再建法では単年度の現金収支(フロー)の指標のみで、ストック(負債等)の財政状況に課題があっても対象とならなかったが、健全化法では公社・第三セクター等を含めた実質的負債によるストック指標である「将来負担比率」を導入した。④「情報開示」は、旧再建法では財政情報の開示や正確性を担保する手段が不十分であったが、健全化法では監査委員の審査・議会報告・住民への公表を義務化し、情報開示を徹底した。⑤「公営企業の経営」は、旧再建法では早期是正を図る機能がなかったが、健全化法においては、「資本不足比率」を用いた経営健全化の仕組みを設け、早期是正を図れるものとした。健全化法における健全化判断比率については、①実質赤字比率、②連結実質赤字比率、③実質公債費比率、④将来負担比率、としている。地方公共団体は、毎年度、健全化判断比率(①〜④)を監査委員の審査に付したうえで、議会に報告し、公表しなければならない。そして、健全化判断比率のいずれかが早期健全化基準以上である場合には「財政健全化計画」、再生判断比率(①〜③)のいずれかが財政再生基準以上である場合には「財政再生計画」を定めなければならない。
(鈴木克典)