治験

 化学合成物質や自然界の物質を「くすり」として国が認証するために、人体での安全性と有効性に関するデータを集める試験を「臨床試験」という。そのなかでも新薬としての承認を目的に行う臨床試験を「治験」という。新薬を開発し、医薬品として販売するためには、厚生労働省の承認と認可をえることが義務づけられている。動物実験や試験管内での実験により、病気に対して有益性があり、かつ人体に安全であると予測された物質が、実際に人体に使用しても効果があり安全なものであるかを、健康な人や患者の協力により調査する。集められた治験結果のデータは生物統計学の手法を用いて分析され、効果があるのか、既存の市販薬よりも効果があるのかが、統計学的に検証されている。「医薬品の臨床試験の実施基準に関する省令」に定められた用件を満たす病院だけが治験を行うことができ、集めたデータの成績に対し、国が安全で病気の治療に必要であると承認したものが「くすり」となる。治験の協力者は、特定非営利活動法人などを通じて募集されている。被験者の権利や安全を保護するため、治験の計画や内容について倫理的、科学的に検討する「治験審査委員会」が治験を行う病院につくられており、メンバーは、試験を実施する病院と利害関係のない医学や科学の専門家や、法律の専門家などで構成されている。また、治験依頼者は、治験責任医師・治験調整医師・治験依頼者から独立した組織である「独立データモニタリング委員会」を設置することができ、委員会は治験の進行や安全性のデータ、および重要な有効性変数を、数回にわたり評価し、治験の継続・変更・中止を提言する。
(北川栄里子)