地域包括ケアシステム

 団塊の世代が75歳以上となる令和7(2025)年をめどに、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能なかぎり住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる、地域の包括的な支援・サービス提供体制をいう。地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を想定している。地域包括ケアシステムという用語がはじめて法的に定義されたのは、平成25(2013)年12月に成立した「社会保障改革プログラム法」(通称。正式名称は「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」)4Ⅳ(平成25年法律第112号)であり、地域包括ケアシステムとは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を送ることができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と規定されている。平成26(2014)年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」(通称。正式名称は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」)2(平成26年法律第83号)でも、その規定は同じである。地域包括ケアシステムは「地域の実情にあった」仕組みを、その地域ごとで設計することが前提となっており、その遂行のためには個別の地域事情に応じた地域マネジメントが重要視されている(三菱UFJリサーチ&コンサルティング『地域包括ケア研究会』)。そのため、全国統一の手法が奨励されているわけではないものの、地域包括ケアシステムを構成する要素としては、以下が指摘されている。
 第1は「住まいと住まい方」である。生活の基盤としての住まいの確保、本人の希望と経済力にあった住まい方の確保が前提である。第2は「介護予防・生活支援」である。尊厳ある生活が継続できる介護予防や生活支援が行われる必要がある。第3、第4、第5が、「医療・看護、介護・リハビリテーション、保健・福祉」である。個人の状況に合わせ、専門職によって提供される。また必要に応じて公正中立なケアマネジメントに基づき、生活支援・福祉サービスと一体的に提供されることが求められる。そしてこれら全体を「本人の選択と本人・家族の心がまえ」が下支えするとされている。厚生労働省の新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチームが平成27(2015)年9月17日に発表した「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現―新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン―」では、地域包括ケアシステムの対象を高齢者だけではなく、全世代に拡大すべきことが掲げられ、近年は地域包括ケアシステムのさらなる推進・拡大が図られている。
(松原由美)