こうした状況のなか、「地域自治組織」という用語は、国・総務省やその設置による研究会では、地制調答申で提言され自治法等に法定された地域自治区等のような公法人(またはその一組織)に限定して用いられており、上記のように自治体が地域自治促進のために独自に多数設置してきた住民参加組織は、地域の公共空間において、「私的組織から何らかの公的性格がある組織まで連続的に存在している」さまざまな組織に含められて、包括的に「地域運営組織」と称されている。「地域運営組織」は、総務省により「地域の生活や暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織、具体的には、従来の自治・相互扶助活動から一歩踏み出した活動を行なっている組織」と定義され、地域創生政策においても用いられている。「地域自治」が「住民自治」をさまざまな地域レベルで振興し実現することであるならば、自治体設置の公法人のみが「地域自治」を担う組織であり、その他の私的・公的組織(営利・非営利組織)の取り組みは「地域自治」ではなく「地域運営」であるとする二元的用語法は改良の余地がある。ローカルガバナンスの実現という政策目標に照らしても、「地域自治」と「地域運営」の機能を分離せず併せもつ地域共治(協治)組織の制度設計やその適切な法人格選択が期待される。
(初谷 勇)