地域自治組織

 平成15(2003)年11月13日、第27次地方制度調査会答申「今後の地方自治制度のあり方に関する答申」において、基礎自治体における住民自治充実や行政と市民との協働推進のための仕組みとして、「基礎自治体の一定の区域を単位とし、住民自治の強化や行政と住民との協働の推進などを目的とする組織として、地域自治組織を基礎自治体の判断によって設置できることとすべきである。」とされ、同答申を踏まえ、平成16(2004)年自治法改正(平成16年5月26日公布)により「地域自治区」が一般制度として規定された。また、平成17(2005)年施行の「市町村の合併の特例等に関する法律(合併特例法)」(平成16年法律第59号)では、合併による地域自治区の特例を定めたほか、合併特例区制度が時限的に導入された。市町村合併の進展とともに、合併特例区を採用する自治体は増加したが、地域自治区の仕組みを採用する自治体は少数にとどまり、全国の自治体では、同制度によらない独自の都市内分権や地域分権(地域内分権)の仕組みを構築し、地域単位で地域自治を担う住民参加組織を設置する例が相次いだ(これらは、小中学校区や合併された旧町村単位に1つずつ地域名を冠し「まちづくり協議会」といった呼称で設けられるものが多い。)。いずれの制度や仕組みを採用するにせよ、本格的な人口減少や超高齢化社会を迎えたいま、住民自治を確立し、地域社会を維持していくために、より住民に身近な地域の単位において、地域共治(ローカルガバナンス)の推進主体となる組織を複数設置し、それらに対して何らかの権限や権能の配分、付与を図る動きが広く展開され増加しており、今後もそうしたニーズは続くことが見込まれている。
 こうした状況のなか、「地域自治組織」という用語は、国・総務省やその設置による研究会では、地制調答申で提言され自治法等に法定された地域自治区等のような公法人(またはその一組織)に限定して用いられており、上記のように自治体が地域自治促進のために独自に多数設置してきた住民参加組織は、地域の公共空間において、「私的組織から何らかの公的性格がある組織まで連続的に存在している」さまざまな組織に含められて、包括的に「地域運営組織」と称されている。「地域運営組織」は、総務省により「地域の生活や暮らしを守るため、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織、具体的には、従来の自治・相互扶助活動から一歩踏み出した活動を行なっている組織」と定義され、地域創生政策においても用いられている。「地域自治」が「住民自治」をさまざまな地域レベルで振興し実現することであるならば、自治体設置の公法人のみが「地域自治」を担う組織であり、その他の私的・公的組織(営利・非営利組織)の取り組みは「地域自治」ではなく「地域運営」であるとする二元的用語法は改良の余地がある。ローカルガバナンスの実現という政策目標に照らしても、「地域自治」と「地域運営」の機能を分離せず併せもつ地域共治(協治)組織の制度設計やその適切な法人格選択が期待される。
(初谷 勇)