ダイバーシティ

 おもに「多様性」と訳される英語(diversity)の名詞で、多種多様である、異なる趣のものが多く含まれるという意味合いを含んだ言葉である。英語の形容詞diverse(さまざまな)の名詞化した言葉で、「生物多様性」、「遺伝的多様性」、「文化多様性」、「人材の多様性」といった概念を指す語として使用される。日本経済連合会が平成12(2000)年8月に発足させた「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」がまとめた報告書では、「従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)や価値・発想をとり入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人のしあわせにつなげようとする戦略」と定義している。もともとは、アメリカで1964年に制定された公民権法において、企業に少数民族や女性に対する機会均等が義務づけられたが、80年代からのグローバル化の進展によって労働力の多様化が必要となり、次第に企業の競争力に繋がる経営上の課題となり、日本企業においても、企業環境の急激な変化のなかでこの概念が強く意識されるようになってきた。当初は、女性の活用に力点が置かれていたが、価値観の多様化がすすむなかで、次第に外国人や高齢者、障害者などの多様な人材の活用に広がっていった。近年は、こうした属性以外にも、育児休暇、介護休暇の充実や柔軟な働き方の面から「ワーク・ライフ・バランス」もダイバーシティのなかで語られるようになってきた。さらに、正社員だけでなく、契約社員や派遣社員などの雇用形態や、柔軟な働き方としてのテレワークなど、労働の場の多様性の概念としても用いられている。
(三木秀夫)