損益計算書(独立行政法人)

 独立行政法人(独立行政法人)の制度設計の特徴として、法人に自律性、自発性を与えるような制度設計とするために、動機づけを重視するとともに、運営費交付金(税金)の扱いは厳格であるべきであるとして、独立行政法人通則法44において、「損益計算書の利益」のうち「経営努力により生じた部分」については、中期計画にあらかじめ記載した使途に充てることができるとされている。独法が中期計画等に沿って通常の運営を行った場合、損益が均衡するように、同法44の損益計算は設計されている。すなわち、通常の運営を行えば損益は均衡し、通常よりも効率的な運営を行うと利益が発生し、利益の一部は動機づけの要請から独立行政法人の業務に充てることができる。また、損益均衡から外れる取引(法人の運営に責めを帰すべきでない取引)は、損益計算から除外することとされている。同法44の利益処分の対象となる利益については、同法38Ⅰで作成が求められる「損益計算書」を通じて算定する必要があることから、損益計算書を同法44の利益処分の対象となる利益を算定する計算書として明確に位置づけられた。なお、「業績の適正な評価に資する情報」として、セグメントごとのアウトプット情報とインプット情報の対比が必要である。インプットは、アウトプット算出に使用したコスト全体であるが、その範囲については、法人において発生したコスト、すなわち、法人内で意思決定が完結する部分(費用)と、意思決定が完結しない部分(損益外費用)の合計額である。他方、国における企画立案に関連するコストや資金調達コスト(国債利息や税金徴税コスト)は、法人において合理的に把握することが困難であり、財務報告利用者にとって有用な情報といえるか疑問が残るとして、「アウトプット算出に使用したコスト」に含めないとされた。その結果、「行政コスト計算書」が、法人のフルコスト情報をあらわす計算書として明確に位置づけられた。
(鵜川正樹)