組織間関係

 マクロ組織論の一領域として1960年代初頭に誕生した視点あるいは考え方である。そして地域の複数の組織体がまとまっていく過程、すなわち組織間の組織化過程を中心に、なぜまとまっていくのかという組織間関係の成立、どのようにまとまっていくのかという組織間関係の過程、そして、まとまっていくことで何が生まれるのかという組織間関係の結果について多くの議論がなされてきた。日本でも1980年前後から議論がスタートし、組織分析の概念やモデルを適用しながら組織間認知、組織間学習、組織間信頼、組織間の集合戦略など多くの視点が提示されてきた。組織間関係をどのような立場から分析するかについては、Evan, W. M. (エヴァン)の組織セットモデルやPfeffer, J. and Salancik, G. R.(フェファーとサランシク)の資源依存モデルに代表されるような、あらかじめ焦点組織を措定し、その焦点組織が他組織との関係をどのようにマネジメントするかという視点からの議論がある一方で、組織間関係システムそのものを対象にしながら組織間システムの安定化過程(たとえば組織間調整)や変動過程(たとえば組織間開発)を分析しようとする視点がある。また組織間関係という場合の組織をどのように考えるかについても、複数の企業組織間の関係を中心にする企業間関係、複数の非営利組織間の関係を中心にする非営利組織間関係、複数の行政組織間の関係を中心にする行政組織間関係、など同一セクターに所属する組織間の関係を分析しようとする視点と、企業と非営利組織、行政と非営利組織、さらには企業と非営利組織と行政など複数のセクターに所属する組織間の関係を分析しようとする視点が存在する。組織間関係の領域は非常に広く、M&A(Mergers [合併] and Acquisitions[ 買収])、戦略的提携、共同研究開発、ジョイントベンチャー、クロスライセンシング、などの企業間関係だけでなく、企業と非営利組織の協働、行政と非営利組織との協働、企業と非営利組織と行政との協働などの組織間関係も含まれる。最近では、社会性の高い企業が非営利組織と組むことで新たな事業展開を図り、新製品の開発を試みるというケースも増えている。また全国各地で、企業と非営利組織が協力し行政が後方支援することで地域活性化をすすめているという事例も多い。異なったセクターに所属する組織が、相互に強みを発揮することで相互関係のなかから新しい社会的価値を創造することが求められるようになっている。また、こうした社会的価値創出の過程をどのようにマネジメントするかの議論が必要になってくる。
(佐々木利廣)