ソーシャル・メディア

 ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を含む、インターネットを介在する人々のコミュニケーション全般を指す。かつて多くの人々に影響を与えた、一握りの人々が職業的に発信する新聞、テレビなどのマスメディアと対比されるかたちで用いられることが多い。人々のコミュニケーションは1990年代のインターネットの登場で大きく変化した。当初、情報ボランティアと評された阪神・淡路大震災の救援活動に代表されるパソコン通信など非営利の利用が大方を占めていたが、その後、商業利用が広がり、国内では平成13(2001)年にインターネット世帯利用率が6割を超えた。平成16(2004)年に国内ではmixiが、国際的にはFacebook、Twitter、動画サイトのYouTube、ライブ配信可能なUstream、そして国内でニコニコ動画、メッセンジャーサービスのLINEの登場と、iPhoneなどのスマートフォンの利用で、人々は容易に繋がり、シェアするソーシャルメディアの影響力を享受するようになった。近年では音声のみのSNSも出現している。しかし2016年のイギリスのEU離脱やアメリカの大統領選ではフェイクニュースによる混乱、分断を生み、以後、突出した政治家の発言が民主主義を危険に曝し、差別を助長した。一方で2010年のジャスミン革命をはじめとするアラブの春、その後のアジアにおける雨傘革命、太陽花革命、ミルクティー同盟等、タイ・香港・台湾の民主化、女性や黒人差別反対の連帯への原動力となり、民衆の繋がりを生む新たな希望をみせる。東日本大震災時に被災者のメッセージが海外を経由して国内の救援に繋がった事例は災害時の有用性も示した。アーティストの人気やヒット商品を喚起する「バズる」現象が、子どもたちの志向や将来像にも影響を与えているが、経済的混乱やさまざまな非合法の活動をも促し、誹謗中傷・人権侵害の道具ともなっている。自殺者が出て、騒乱の扇動にも至り、国家権力や商業プロバイダーによる規制判断が下されるようになり、言論・表現の自由とは矛盾する表現媒体となりつつある。
(松浦さと子)