ソーシャル・ビジネス

 親子の孤立、高齢者の孤立、障害者の自立といったさまざまな社会的課題の解決を、ビジネス的手法を用いて図ろうとするものである。経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書」(平成20[2008]年)によると、ソーシャル・ビジネスは、①社会性(現在、解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること)、②事業性(①のミッションをビジネスの形にあらわし、継続的に事業活動をすすめていくこと)、③革新性(新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること)、という3つの要件を満たすものとされている。しかし、なかには、受益者から十分な対価をえることが難しい事業もみられる。そうした事業においては、事業収益のみで継続していくことは困難であり、寄付金や補助金などにある程度依存しなければならない。従って、事業性が平均以下であっても、社会性が平均以上である事業については、ソーシャル・ビジネスとして捉える必要がある。代表的なソーシャル・ビジネスの例としては、働く母親の多くは子供が病気になると会社を休まなければならず、場合によっては職を失うこともあるという社会的課題の解決を図るため、会員制をとり、施設をつくらずに、契約している保育士等の有資格者が病気の子供を看病するというもの(NPO法人フローレンス)や、ホームレスの人々が仕事をえるには住居が必要であるが、そのための資金がなく、自立ができないという社会的課題の解決を図るため、寄付や支援ではなく、雑誌の販売という仕事を提供することにより、自立を目指してもらうというもの(有限会社ビッグイシュー日本)などがあげられる。
(菅原浩信)