ソーシャル・インパクト・ボンド

 民間資金を活用して社会的課題を解決する事業を実施し、その事業成果に応じた対価が行政より支払われる手法である。2010年にイギリスで開始され、その後欧米を中心に発展した。日本においても2015年に最初の取り組みが行われている。ソーシャル・インパクト・ボンドでは、成果連動型の民間委託契約が採用される。通常、行政が業務を民間委託する場合、民間のサービス提供者と業務委託契約を締結し、サービスの成果にかかわらず一定の対価が支払われる。しかし、ソーシャル・インパクト・ボンドの場合には、サービス提供者の成果に応じて行政は対価を支払う。このサービスの成果の測定は、通常一定の期間経過後に実施されることになる。そこでサービス提供者は、行政からの支払いを受けるまでのサービス提供の費用について、民間の資金提供者から資金調達を行う。そして行政と事前に合意した成果目標が達成された場合、後日行政は成果に応じた支払いを行うという仕組みになっている。資金提供者はリターンを受けるが、このリターンには事業収益に加え、事業の成果に応じた行政からの支出が加わることになる。ソーシャル・インパクト・ボンドを採用した場合、おもなサービス提供者である社会的企業や非営利組織は、十分な事業資金がない場合でも、民間の資金提供者から資金調達をすることで事業を開始することができる。資金提供者は投資を通じて社会的課題に対して貢献するとともに、サービス提供者が成果を出せばより多くのリターンを受けることが可能となる。社会的な利益を第1の目的としながらも、経済的利益も同時にえることができる。また、行政は成果連動型の委託契約を採用することにより、行政コストを削減することができる。
(上原優子)