説明責任

 Accountability(アカウンタビリティ)という用語に当てられた日本語訳である。アカウンタビリティを動詞にすればaccoun(t 計算する)となるが、accountでいう計算するという意味には、たんに計算した結果を示すだけでなく、そこに至るまでに何があったのかを示すという意味合いを含んでおり、ここから説明という意味が生まれる。アカウンタビリティに説明責任という用語が当てられたことで、説明という日本語の概念に固定されがちであるが、アカウンタビリティはたんに説明するという行為を指すだけの狭い概念ではない。また、説明する責任というだけの話でもない。説明責任は、責任を負う対象の期待に反することなく行動すること、すなわち責任を負う対象をつねに念頭に置いて行動することを暗に要求するものであり、そういった意味で漠然とではあるが広い範囲の責任を意味する。ここで、非営利組織の責任の対象であるが、非営利組織を取り巻く組織内外の利害関係者として、国や地方自治体、地域住民、サービス利用者、資金提供者(寄付者、出資者など)、従業員、取引先など幅広く考えられる。税金の優遇を受けているときには、広くは納税者、国民一般というパブリックまで広がりをもつ。従って、これらの人々の期待に応じた行動をすることも、またかぎられた資源を効率的に活用することも説明責任の範疇である。さらに、組織行動の結果を伝えることも説明責任の範疇に含まれる。一般に非営利組織の行動は、計画→実行→報告→評価→フィードバックという流れで進行するが、説明責任に配慮する組織であり続けるためには、この組織行動全般にわたってアカウンタビリティを意識しておく必要がある。アカウンタビリティの視点から、計画(説明責任計画)段階では、利害関係者の期待感に対して事業計画の目的・内容が適合しているかを確認し、事業目的が妥当であるとする理論的な説明を示す必要がある。これに基づいて、事業計画全体を構成する個別事業計画レベルの目的、期待感、理論的説明についても記述する。つぎに、全体の事業目的と個別事業目標との整合性を保つために、事業計画全体および個別の事業計画を評価する指標と方法を決定し記述しておく。実行段階では、実行のための資源のインプット、アウトプットおよび成果を記述する。この実行に関する記述と個別事業目的に関する記述とを対比させることによって、事業計画の結果を評価しフィードバックする。集約された組織行動は報告書に集約して、まとめて情報伝達の手段を通じて組織内外へ開示されることが望ましい。何らかの報告書という形式で伝達・開示する行為は、漠然とした責任という摑み所のない説明責任を表現する有効な手段である。
(梅津亮子)