責任限定契約

 非業務執行理事等(代表理事等業務執行理事以外の理事や監事、会計監査人)が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないことを前提とし、「定款で定めた額の範囲内であらかじめ法人が定めた額」と「最低責任限度額」のいずれか高い額を限度として損害賠償責任とする旨の契約である(一般法人法115Ⅰ、198)。理事、監事または会計監査人(一般財団法人の場合、評議員も含む。以下、役員等)は、その任務を怠ったときは、法人に対し、その生じた損害につき賠償責任を負う(一般法人法111、198)。原則として、法人は役員等の当該賠償責任について、総社員(総評議員)の同意がなければ免除することができない(一般法人法112、198)。ただし、役員等のうち、非業務執行理事等については、法人が定款に定めることにより、責任限定契約を締結し、その損害賠償額の限度を設けることができる。責任限定契約における最低責任限度額とは、非業務執行理事等の職務執行対価等1年間当たり相当額の2倍の額をいう(一般法人法113Ⅰ②、198)。職務執行対価等1年間当たり相当額は、つぎに掲げる額①および②の合計額をいう(一般法人法施行規則19、63)。①非業務執行理事等がその在職中に報酬、賞与その他の職務執行の対価として法人から受けるべき財産上の利益の額の事業年度ごとの合計額のうちもっとも高い額。②当該法人から受けた役員退職慰労金を一定数(在任年数あるいは2のどちらか少ない数)で除した金額。法人は、責任限定契約の対象となる損害が生じた場合、その後、最初に招集される社員総会(評議員会)で、責任限定契約の内容、契約締結理由、損害額のうち、当該非業務執行理事等が賠償責任を負わないとされた額等を開示しなければならない(一般法人法115Ⅳ)。なお、社会福祉法人および学校法人の関係法令においても責任限定契約が規定されている(社福法45の20、私学法44の2Ⅳ)。
(田口安克)