税率

 法人税の税率は、自然人である個人の所得税に適用される累進税率と異なり、基本的には単一の比例税率が適用されるべきとされているが、現行法人税法においては、基本税率(23.2%)のほかに、政策的な観点から、中小法人の所得年800万円以下の部分に係る軽減税率(19%)と公益法人等(法人税法別表2)および協同組合等(法人税法別表3)に対する軽減税率(19%)が設けられている(法人税法66)。非営利法人に対する税制上の措置は、各法人制度における非営利性や公益性の度合いに応じて設けられており、非営利型の一般社団・財団法人、みなし公益法人等(特定非営利活動法人、認可地縁団体等)に対しては、みなし寄附金(法人税法37Ⅴ)や公益法人等に対する軽減税率は適用されない。なお、公益社団・財団法人については、公益目的事業(公益認定法2Ⅳ)が収益事業から除外され(非課税)、みなし寄附金の特別限度額(法人税法施行令73の2)が設けられていること等を踏まえ、公益法人等に対する軽減税率は適用されないこととされている(法人税法66Ⅲ)。公益法人等および協同組合等に対する軽減税率については、これらの法人が普通法人とは異なる特殊性を有しているとしても、公益法人等のみなし寄附金制度や協同組合等の事業分量配当等の損金算入(法人税法60の2)といった所得計算の段階における一定の配慮がなされていることから、そのうえで軽減税率を適用することは過大な対応であり、その見直しが必要であるとの指摘がある。医療法人のうち社会医療法人(医療法42の2Ⅰ)は、その組織や事業運営に関する規律面や事業内容などにおいて、法人税法上の公益法人等とされている他の法人と同様の性格を有していることから、公益法人等の範囲に掲げられ(法人税法別表2)、軽減税率が適用される。それ以外の医療法人のうち、特定医療法人(財団たる医療法人または社団たる医療法人で持分の定めがないもののうち、その事業が医療の普及および向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、公的に運営されているものとして国税庁長官の承認を受けたものをいう。)の承認を受けた後に終了した事業年度の所得については、公益法人等に対する軽減税率と同様の税率(19%)が適用される(租特法67の2)。協同組合等のうち、特定協同組合等(協同組合等の事業年度が、物品供給事業に係る収入金額の総収入金額に占める割合が50%超、組合員数が50万人以上、かつ、店舗売上高が年1,000億円以上である場合の協同組合等をいう。)の各事業年度の所得金額のうち10億円を超える部分については22%の税率が適用される(租特法68)。
 なお、中小企業者等の所得年800万円以下の部分に係る軽減税率は、時限的措置として、15%(本則税率19%)とされている(租特法42の3の2)。この特例措置の適用対象法人は、つぎの法人とされている。①普通法人のうち各事業年度終了の時において資本・出資金額が1億円以下であるものまたは資本・出資を有しないもの(相互会社等を除く。)、②公益社団・財団法人、非営利型の一般社団・財団法人、③みなし公益法人等、④公益法人等または協同組合等、⑤特定医療法人、⑥人格のない社団等、⑦特定協同組合等。
(鈴木 修)