精神保健ボランティア

 精神病患者(精神障害者)やその家族および関係者と交流を図り、その社会生活を支援する自発的で無償の活動のことである。精神病患者(精神障害者)は、疾病(精神障害)に由来する困難を抱えている。向精神薬の副作用その他の治療にかかわる困難と、疾病(精神障害)による生活の困難が同時に起こることが多い。また、多くの人々は、精神病を理解しておらず、そのため精神病(精神障害)に対する偏見が多くみられる。精神病患者(精神障害者)は、それによる差別にさらされ、それが社会的不利の原因となっている。精神病患者(精神障害者)は、こうした生活困難や社会的不利により、長期の入院を余儀なくされている場合が多い。平成16(2004)年以降展開されている退院促進事業では、退院促進対象入院患者は約7万人と算定されていたが、現在でも、その数はあまり減少していない。精神障害者の地域社会での生活を支えるためには、障害者総合支援制度や障害者雇用制が適用される。そこでは、市町村や専門職員等が実際の支援に当たっている。こうしたいわゆる社会資源の1つとして、精神保健ボランティアがあげられる。栄セツコ・小澤温・岡田進一・白澤政和は精神保健ボランティアについて、精神障害者が抱える生活上の問題を自分とかかわりのある課題として捉え、その解決や支援という諸活動を通じて、精神障害者とともに生活できるコミュニティづくりに参画できる人、としているが、これは、やや狭いように思われる。なぜならば、精神保健ボランティアの活動領域は幅広いからである。医療・保健領域、就労移行・就労提供サービスや会社等雇用現場の領域、グループホームその他居住領域、当事者組織・活動や地域活動支援センター等コミュニティ領域等を活動領域としてあげることができる。精神保健ボランティアは、他のボランティアと同様、無償性、自発性を基盤としているが、それ以外に幾つかの特徴をあげることができる。そこでは、地域住民のほか、精神保健福祉専門職員等や、当事者の参加・活動の場合が含まれる。身体障害、知的・発達障害においても、当事者参加がみられるが、精神障害では、当事者参加がより多くみられる。
(増山道康)