政治献金

 政党・政治団体・政治家の政治活動に対する寄附のことである。個人や団体は、寄附を公益的な意図をもって、政策の実現のため、政治家の当選や政治思想の実現のために、あるいは私益や共益の実現のための公共工事の受注や補助金の獲得のためなど多様な目的で行う。政治献金は、政党や政治家の活動を支える重要な手段である。非営利社会活動の重要な類型として、政治活動がある。一般のNPOの活動として、サービス提供のみならず、政策形成・変容などを追及することも多い。また、政治団体や政党、後援会など政治活動を主たる目的とする非営利組織もある。非営利団体は、政治献金の出し手とも受け手ともなりえるのである。しかし、企業献金のみならず、共益団体や非営利団体である業界団体や公益法人の政治献金は、しばしば贈収賄などの政治腐敗を生んできた。また、個人でも巨富をもつ個人の寄附が、1人1票の平等な政治参加を規範とする民主主義的な政治過程を歪める危険がある。たとえば、アメリカでは、富豪による非営利団体を媒介とした寄附が巨額にのぼり、その大規模キャンペーン、アカデミズムや教育への影響、政治家への迂回献金が、大きな政治問題となっている(たとえば、Mayer, J.[メイヤー]『ダーク・マネー―巧妙に洗脳される米国民』)。各国で、団体献金の禁止や献金額の上限の設定、献金の公開などの一般的規制があるが、抜け穴が多いとしばしば批判される。さらに非営利団体に対しても、税制上の優遇を受ける公益的団体の政治献金の禁止や制限などの法的規制がある。日本では、一般的には政治資金規正法があり、非営利団体への規制として、特活法における規制などがある。海外でも、イギリスのチャリティ法による規制やアメリカの連邦歳入法における501(c)(3)団体の政治活動規制はその事例である。大衆的な政治献金やボランティアとしての政治活動は、民主的政治過程や健全な市民社会にとって不可欠である。政治献金の民主的コントロールは、非営利社会行動・団体論においても重要な課題である。
(岡本仁宏)