税効果会計

 法人税や住民税、事業税等のように利益に関連する金額を課税標準とする税金(法人税等)の額を、税金として支出ないしは支出が確定する時期にかかわらず、会計上の財務諸表に含められる要素が課税所得に含まれていたならば支払うことになる金額をもって、費用となる法人税等の金額とする処理方法である。いわば税効果会計は、法人税等としての支出額を適正な会計期間に費用配分する手続きである。こうした期間配分により法人税等と法人税等控除前の純利益とを合理的に対応させることが、その目的である。具体的処理は、まず会計上と税務上の処理の相違により生じる財務諸表上と納税申告上の差異を把握し、その差異のうち潜在的な税金支払いへの影響(税効果)があるもの(一時的差異)に税率を乗じて税効果額を求める。そして税効果額が将来の税金を増加させる影響を有する場合には、法人税等を加算調整するとともに繰延税金負債を計上し、反対に将来の税金を減少させる影響を有する場合には、法人税等を減算調整するとともに繰延税金資産を計上する。税効果額計算への適用税率については、一般的に、差異発生期間の税率を用いる方法(繰延法)と差異解消期間の税率を用いる方法(資産負債法)が説明されるが、現在採用されているのは後者である。差異解消期間の税率はあくまで予測となるため、差異発生期間に判明していなかった税率の変更等が後の期間で生じた場合には、税効果額(繰延税金資産・負債)の修正を行う。非営利法人において、税制上のみなし配当がある場合には、法人として支払う法人税等の金額に変化が生じるために、別途考慮する必要がある。みなし配当の額を収益事業の利益から控除した額に係る法人税等の額を計上することになるが、たとえば、収益事業の利益の50%のみなし配当が確定しているならば、収益事業における法人税等の調整額を、適用税率の段階で行い「適用税率×(1-50%)」として計算することができる。
(齋藤真哉)