診療報酬

 保険医療機関および保険薬局が「療養の給付」を行った際に対価として保険者から受けとる報酬のことである。保健医療サービスには、医療保険を使って医療サービスや薬などを提供する行為「療養の給付」と、療養費などの一部を除き、直接物またはサービスが提供される「現物給付」という形がとられている。このうち、「療養の給付」には、①診療、②薬剤または治療材料の支給、③処置、手術その他の治療、④居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護、⑤病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護で構成されている。診療報酬は、医科、歯科、調剤の3種類に分類されており、このうち、医科については、第1章「基本診療料」(外来医療で算定する初診料や再診料、入院に係る入院基本料等)と、第2章「特掲診療料」(医学管理等、在宅医療、検査、画像診断等)から構成されている。診療報酬制度については、昭和2(1927)年の健康保険法施行(大正11年法律第70号)に合わせ、政府と日本医師会が協議し決定した報酬金額について、日本医師会が団体として診療報酬を請負契約する方式が採用されたのが起源である。当時の報酬配分方法は、国でえられた総報酬について、1人当たり単価に被保険者の頭数を乗じた額を日本医師会に一括で支払い、日本医師会が各道府県医師会を通じて医師に支払う構造となっていた(人頭請負方式)。昭和18(1943)年に厚生大臣(現厚生労働大臣)が医師会などの意見を聴取して診療報酬を定めることとなり、医療行為ごとに単価を設定する定額単価方式が採用され、医師会を経由せずに保険者から保険医に支払う方式へと変更した。戦後になり、昭和23(1948)年に診療報酬の審査・支払いを円滑に行うための組織として社会保険診療報酬支払基金が創設され、昭和25(1950)年には診療報酬の内容や点数について審議・答申する厚生大臣(現厚生労働大臣)の諮問機関として中央社会保険医療協議会(中医協)が設置され、保険診療の範囲の拡大と報酬の引き上げが図られた。その後、昭和33(1958)年に1点単価を10円とし、診療報酬改定の際は1点単価を固定したまま、医療行為について点数を変更していく現行の方式として導入された。その後、報酬評価について「物と技術」を分離する評価体系を確立するため、昭和33年に新医療費制度を制定し、甲表と乙表により評価する制度が構築された。入院医療に係る報酬評価については、その後大幅な見直しが断続的に行われることとなる。左表はその変遷を記載している。
 また、外来医療に係る報酬評価については、保険医療機関相互間の機能の分担および業務の連携のさらなる推進のため、平成28(2016)年度から一定規模以上の保険医療機関において、紹介状なしで受診した患者から定額負担の徴収を責務とすることとした。
改定年 おもな見直し
平成6(1994)年 甲表、乙表の統合と評価方法の見直し
平成18(2006)年 看護配置を基準とした体系整理
平成22(2010)年以降〜 患者に対する評価重視へと移行
平成30(2018)年 患者に対する評価を鮮明化するための評価区分の見直し
(上村知宏)