私立学校法

 私立学校に関する教育行政と、学校法人について定めた法律であり、私立学校の自主性や独自性を尊重し、公共性の確保を目指すものである。その理念は、私立学校が寄付財産などを基礎として設立された学校法人によって設置され、経費が主として寄付財産や補助金、学費によって賄われる特殊な性格に由来している。同法の目的は「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の健全な発達を図ること」とされており(私学法1)、私立学校の定義および所轄庁、私立学校に関する教育行政や学校法人などについて規定するものである。同法の目的にある「私立学校の特性」とは、私立学校が私人の寄付財産等によって設立・運営されることを原則とする特徴的な性格を示している。私立学校において、建学の精神や独自の校風が強調されたり、所轄庁による規制ができるだけ制限されているのもこの特性に根ざすものである。「私立学校の自主性」とは、私立学校の運営について、自律的に責任をもって行うことをいう。また、私立学校は国公立の学校と同じく「公の性質」(教育基本法6Ⅰ)を有するものとされる。このように、私立学校はその自主性を尊重するとともに、公共性にも十分配慮することにより、その健全な発達が期待されている。近年、学校法人のガバナンスにかかわる私学法の改正が行われた。こうした改正の背景には、少子化の影響から学校経営が厳しくなるなか、健全な学校経営を行うために、責任をもつ機関(学校法人の場合は理事会)が権限と責任を果たすことが要請されている事情がある。直近の私学法の改正(令和元[2019]年12月施行、令和2[2020]年4月施行)では、学校法人における経営基盤の強化や役員に対する経営責任の明確化などに関する規定が新設された。これは、学校法人の公共性や公益性をより向上させるとともに、事業の社会的な信頼性を高めるねらいがある。また、大学の目的や方針を踏まえ、中期計画策定を義務化し、中長期的な観点で事業運営を行うことが要求された。おもな改正内容はつぎのとおりである。①学校法人の責務として、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その設置する私立学校の教育の質の向上およびその運営の透明性の確保を図るよう努めること(私学法24)。②学校法人は、その事業を行うにあたり、学校法人の関係者に対する特別の利益供与を禁止すること(同法26の2)。③役員が、その任務を怠ったときは、学校法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこと(同法44の2)。また、④役員の職務の遂行にあたり、悪意または重大な過失による結果、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと(同法44の3)。⑤文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、認証評価の結果を踏まえて事業に関する中期的な計画を作成すること(同法45の2)。
(岩崎保道)