(尾上選哉)
正味財産増減計算書(宗教法人)
「宗教法人会計の指針」(指針)における計算書類の1つであり、正味財産(資産と負債の差額;純財産額)の当期中の増減を示し、期末における正味財産合計額を表示する計算書類である。正味財産増減計算書は、宗教法人法によりその作成等が規定されるものではないが、指針は収支計算書を中心とする計算書類の体系を採用していることから、正味財産増減計算書は収支計算書の当年度収支差額と貸借対照表の正味財産の当年度額を結びつける役割を担っている。収支差額以外の資産・負債の増減によって正味財産が増減することから、このような増減の内容を明らかにし、「収支差額と正味財産の繋がりを示し、会計的整合性を確保する」ことを、正味財産増減計算書の作成根拠として掲げている。正味財産増減額を計算表示する方法には、ストック式とフロー式と呼ばれる2つの方法がある。指針はストック式を本則とし、フロー式による作成も認められる。ストック式とは、当該会計年度中における正味財産増加額(それぞれの資産の増加額および負債の減少額)と正味財産減少額(それぞれの資産の減少額と負債の増加額)を対比させ、正味財産がどれだけ当期に増加(減少)したかを示す方法である。フロー式とは、正味財産の増加原因(収益)と減少原因(費用)を対比させ、正味財産がどれだけ当期に増加(減少)したかを示す方法である。ストック式は、昭和60(1985)年公表の公益法人会計基準における正味財産増減計算書の作成方法として導入されたものであり、指針はこれに準じている。複式簿記により収支計算書と貸借対照表を作成する場合には、「一取引二仕訳(切返し仕訳)」という企業会計にはみられない簿記処理が必要であり、この処理に基づいて作成されるストック式の正味財産増減計算書を通じて、収支計算書と貸借対照表が連携することになる。