正味財産増減計算書(公益社団・財団法人)

 公益法人会計基準において作成すべき財務諸表の1つであり、一事業年度における正味財産(純資産)のすべての増減状況を原因別に集計し表示したもので、企業会計における損益計算書に相当する。正味財産増減計算書は、「一般正味財産増減の部」と「指定正味財産増減の部」、「基金増減の部」の3つに区分される。なお、様式は公益法人会計基準の運用指針に記載されている。
 一般正味財産増減の部は、経常収益および経常費用を記載して当期経常増減額を表示し、これに経常外増減に属する項目を加減して当期一般正味財産増減額を表示するとともに、さらにこれに一般正味財産期首残高を加算して一般正味財産期末残高を表示しなければならない。指定正味財産増減の部は、指定正味財産増減額を発生原因別に表示し、これに指定正味財産期首残高を加算して指定正味財産期末残高を表示しなければならない。なお、指定正味財産とは、寄付者等の意思により資産の使途、処分または保有形態について制約が課されている場合の当該資産をいう。指定正味財産の趣旨は、寄付者等からの受託責任の明確化のため、一般正味財産から区分することにある。
〈指定正味財産増減額の発生原因別の表示と仕訳の例〉
 寄付者等の意思により使途の制約が課された資産の寄付を受けた場合には、当該資産の額を指定正味財産増減の部に記載する。
 (借)現金預金   ×××
  (貸)指定―受取寄付金  ×××
 その後、当該資産について使途の制約が解除されたり、減価償却を行ったり、災害等により消滅した場合には、当該資産の帳簿価額や減価償却額を賃借対照表上の指定正味財産の部から一般正味財産の部に振り替える。そしてその振替額は、正味財産増減計算書に記載される。
 (借)指定―一般正味財産への振替額   ×××
  (貸)一般―受取寄付金等振替額     ×××
 法人が国または地方公共団体等から補助金等を受け入れた場合には、原則として、当該受入額を受取補助金等として指定正味財産増減の部に記載する。
 (借)現金預金   ×××
  (貸)指定―受取補助金等   ×××
 その後、補助金等の目的たる支出が行われるのに応じて当該金額を指定正味財産の部から一般正味財産の部に振り替える。
 (借)指定―一般正味財産への振替額   ×××
  (貸)一般―受取補助金等振替額     ×××
 基金増減の部は、公益・一般社団法人が一般法人法131に規定する基金を設定した場合に設けられる。基金増減の部は、基金増減額を発生原因別に表示し、これに基金期首残高を加算して基金期末残高を表示しなければならない。
(長南全隆)