正味財産

 資産から負債を差し引いた価額である。公益法人会計基準上、正味財産は、指定正味財産と一般正味財産の2つ(基金を設定した場合には3つ)に区分される。指定正味財産とは、資源提供者である主務官庁や寄付者等の意思により使途、処分または保有形態について制約が課されている財産の価額である。一般正味財産とは、使途の制約等が課されていない財産の価額であり、事業の運営による余剰等は一般正味財産に区分される。正味財産を使途の制約(拘束)の程度により分類し報告するという方法は、財務諸表利用者にとっての有用な情報には資源提供者の提供資源に対する拘束が密接にかかわっているとするアメリカの考え方に由来している。そこでは、非営利組織体の純資産を2つの相互に排他的な区分、すなわち拘束純資産と非拘束純資産に分けている。また、公益法人会計基準上、指定正味財産に計上されるものは、資産側では維持すべき基本財産または特定資産として特定表示される(それ以外のものは流動資産やその他の固定資産として表示される。)。すなわち、指定正味財産は制約の課された資産と対応する。寄付者等の意思の実現または減価償却等によりその制約が解かれた場合には、当該制約解除額を指定正味財産から一般正味財産に振り替える。指定正味財産と紐付く資産との対応関係や一般正味財産への振替額に関する情報は、財務諸表に注記される。このように公益法人会計基準は、使途の制約等による区分(正味財産側)および正味財産との対応関係(資産側)に基づいた金額的情報により、資源提供者の意思に従った事業運営状況を明確にするとともに、組織体が提供するサービスの種類・水準等の評価に資する情報を提供するという報告目的への対応を意図している。加えて、注記情報や財産目録(資産等の物量的情報・利用情報を提供する)により補足・補完しようとしている。
(武田紀仁)