消費者協同組合

 消費者が地域別もしくは職域別に、消費者の生活向上のために結成する協同組合をいう。消費者は、この組合を基盤にして生活の安定と向上を図ることを目指すが、組合の活動は、生活必需品の供給にとどまらず、文化・教育など広く生活の充実に及ぶこともある。具体的には、組合員の生活必需品の共同購入等、生活のための共同施設の運用、生活改善教育、文化向上のための事業運営などである。消費者協同組合の原型となったのは、1844年のイギリスの「ロッチデール公正開拓者(先駆者)組合」の設立であると考えられている。この組合では、①購買高による剰余金の分配、②品質の維持、③市価での取引、④現金での販売制度、⑤組合管理での組合員の平等、⑥組合の政治的・宗教的な中立の原則、⑦教育の推進、の7つの運営原則(ロッチデール原則)を定めた。このロッチデール公正開拓者組合に影響されて、イギリス国内では各地に消費者協同組合が設立された。また1800年代後半にはヨーロッパ各国に広がり、1900年代には、ソ連などの社会主義国やアメリカ、アジア、オセアニアなど、世界各地に広がっていくことになった。日本においては、明治初頭にロッチデール公正開拓者組合が紹介されたことを契機に、明治12(1879)年に東京に共立商社・同益社、大阪に共立商店といった協同組合が誕生した。その後大正10(1921)年に神戸購買組合と灘購買組合、昭和元(1926)年に東京学生消費組合、昭和2(1927)年に東京に江東消費組合などが設立された。これら消費組合の多くは戦争と統制経済のなかで姿を消していった。戦後、昭和23(1948)年には、生協法が制定されたことに伴い、数多くの消費生活協同組合、すなわち「生協」が設立された。「生協」には一般消費者を中心とした地域生協と、大学・職場を単位に構成された職域生協とがあり、生活必需品の取り扱いだけでなく、医療、共済などの分野や福祉サービスや環境保全に役立つ商品などを取り扱う生協もある。
(髙山昌茂)