償却原価法

 債券等をその額面金額と異なる価額で取得した場合に、その差額を償還期まで毎期一定の方法で、逐次、貸借対照表価額に加算または減算する方法をいう。償却原価法により算定された価額を償却原価という。加算修正をする場合をアキュムレーション(accumulation)と呼び、減算修正する場合をアモチゼーション(amortization)と呼ぶ。社債等の債券は、その額面金額に対して、利子が支払われる有価証券である。約定利子率が発行時点の市場利子率と等しく、かつ、償還についてのリスクが特段なければ、発行価額は、額面金額で発行される(平価発行)。たとえば額面100万円の社債を100万円で取得した場合には、貸借対照表に100万円として評価・計上される。しかし、約定利子率が市場利子率より低ければ、発行価額は額面未満で発行される(割引発行)し、約定利子率が市場利子率より高ければ、発行価額は額面を超えて発行される(打歩発行)。このように、額面金額と異なる価額で発行される場合の両者の差額が金利の調整と認められる場合に、償却原価法を用いて評価額の修正を行う。なお償却原価法による増額・減額分は、利息の授受として処理されることになる。償却原価法による差額を修正する方法には、実効利子率による複利計算を前提とした「利息法」と、毎期均等額ずつ差額を配分する「定額法」がある。なお、償却原価法は、金融資産と金融負債のどちらにおいても適用しうる考え方である。非営利法人においては、金融資産たる有価証券等の期末評価方法として償却原価法が用いられることがある。一方で、非営利法人の金融負債としては、学校法人が発行する学校債や医療法人が発行する医療法人債があるが、関連諸法規等との関係で、金銭消費貸借契約による借入金とされたり、有価証券の発行とされたりする場合がある。
(成川正晃)