障害者総合支援法

 障害者への支援を定めた法律で、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」という。平成18(2006)年に施行された障害者自立支援法の内容や問題点を考慮し、障害者自立支援法を改正して平成25(2013)年4月に施行された。法律の目的は、「障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」(障害者総合支援法1)とされており、基本理念として、①すべての国民が障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享受するかけがえのない個人として尊重され、ともに生きる社会を実現すること、②すべての障害者および障害児が可能なかぎりその身近な場所において必要な日常生活や社会生活を営むための支援を受けることができること、③日常生活および社会生活を営むうえで障害となるような物事や制度、慣行観念その他一切のものの除去に努めること(同法1の2)、が規定されている。同法4において、「障害者」を、①身体障害者福祉法4で規定する身体障害者、②知的障害者福祉法でいう知的障害者のうち18歳以上の人、③精神保健福祉法5に規定する精神障害者のうち18歳以上の人(発達障害のある人を含む)、④難病(治療方法が確立していない疾患その他の特殊の疾患で政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度)のある18歳以上の人、と規定しており、これまで難病のある人は必要な支援を受けにくい状況にあったが対象に含めたことにより、必要なサービスを利用できるようになった。
 この法律の前身である、障害者自立支援法では、これまで別々の法律で支援がなされていた制度体系から、3障害(身体、知的、精神)の一元化、サービス実施主体を市町村に一元化、就労支援の強化、支援決定プロセスの透明化による「障害支援区分」(旧、障害程度区分)、サービス料に応じた利用者負担(応益負担)制度などが導入された。さらに、障害児を対象とした給付について、施設は児童福祉法、居宅・通所事業は障害者自立支援法とされていたものを、平成24(2012)年の改正で障害者自立支援法で障害児にも網をかけつつ、給付の根拠法を児童福祉法に一元化した。法では、利用者の負担能力に応じた利用料の支払い方法(応能負担)へと変更され、平成30(2018)年の改正障害者総合支援法では、障害のある人が住み慣れた地域で生活するために必要な支援を強化する目的で、①障害のある人が望む地域生活の支援、②障害のある子どものニーズの多様化への対応、③サービスの質の確保・向上に向けた環境整備、が図られている。
(小口将典)