障害者権利条約

 2006年12月の国連総会で採択され、2008年5月に発効した条約(正式名称:障害者の権利に関する条約)である。国際人権法に基づき障害者への差別禁止、障害者の尊厳・権利を保障することを義務づけた障害者に関するはじめての国際条約である。前文25項目と本則50条から構成される本条約は、「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」を目的とし、その内容は、無差別、平等、社会への包容等の一般原則(同条約3)、締約国の一般的義務(同条約4)、教育・健康・労働・雇用に関する権利(同条約24〜27)、社会的な保障(同条約28)、文化的な生活やスポーツへの参加(同条約30)、締約国による報告(同条約35)等、多岐にわたる。本条約の特徴として、その審議過程において、障害当事者の参画、NGO(非政府組織)代表の発言が認められたことで、「NothingAbout Us Without Us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)」というスローガンが共有され、障害者が自身にかかわる問題に主体的に関与する名実ともに障害者のための条約を作成しようという国際社会の総意が反映された。また内容面における特徴の1つとして新たな障害の捉え方、つまり、障害を「発展する概念」であるとしたうえで、「機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用」であるということが明文化された。日本は批准に先立ち、国内法の整備、すなわち「障害者基本法」の改正(平成23[2011]年8月)、「障害者総合支援法」制定(平成24[2012]年6月)、障害者基本法4の「差別の禁止」規定を具体化する「障害者差別解消法」制定および「障害者雇用促進法」の改正(平成25[2013]年6月)などの制度改革を経て、平成25年11月19日に衆議院本会議、同年12月4日には参議院本会議で条約の批准が承認された。これを受け、日本は批准書を国連に寄託し、141番目の締約国となった。
(李 庸吉)