出資金(医療法人)

 持分の定めのある医療法人である場合において、社員その他法人の出資者が出資した金額のこと(医療法人会計基準13)である。社員等が実際に払い込みをした金額を貸借対照表の純資産の部に直接計上し、退社による払い戻しが行われた場合には、当該社員の払い込み金額を直接減額する。医療法人は「社団たる医療法人」と「財団たる医療法人」に区分され、社団たる医療法人(社団医療法人)が医療法人全体の大半を占めている。この場合、社団たる医療法人のうち、出資持分の定めのある社団医療法人の純資産区分は、出資金、積立金、評価・換算差額等となる。なお、医療法の改正(平成18[2006]年6月公布、平成19[2007]年4月施行)により、平成19年4月1日以降に新設される医療法人は、出資持分の定めのない医療法人とし、医療法人が必要とする資金調達確保のため、定款の定めるところにより基金制度を採用することとなった。なお、持分の定めのない社団医療法人で基金制度を有する法人の純資産区分は、基金、積立金、評価・換算差額等となる。この改正を受け、既存の出資持分の定めのある医療法人の新設は認められないが、存続する経過措置がとられている。また、出資持分の払戻請求権および残余財産分配請求権の及ぶ範囲が、出資者が出資した額に限定される法人は、出資額限度法人と呼ばれ、このような出資持分の定めのある医療法人は「経過措置型医療法人」として類型されている。出資持分の定めのある医療法人とは、社団医療法人であり、その定款に出資持分に関する定め、すなわち、社員の退社に伴う出資持分(社団医療法人に出資した者が、当該医療法人に対して出資額に応じて有する財産権のこと)の払い戻し、および医療法人の解散に伴う残余財産の分配に関する定めを設けている法人である。なお、医療法人の出資持分には、解散時に残余財産の分配がなされるため、医療法人の非営利性が保持されないこと、出資持分に相続課税がなされ、承継を困難にすること、そして、出資持分を保有する社員が退社にあたり出資持分の払戻請求権を行使した場合、多額となり経営を圧迫する懸念があることなどの理由から、出資持分のない医療法人へ移行することが推奨されている。また出資持分のない医療法人へ移行後に、出資持分のある医療法人へ戻ることは禁止されている。
(石田万由里)