収支相償

 公益法人の公益目的事業の収益が、公益目的事業を実施する際に生じる適正な費用を超えないことを意味する。公益認定法5は、公益法人として認定されるための基準を示しているが、同法5⑥では、「公益目的事業に係る収入が適正な費用を超えないと見込まれること」と規定されている。また同法14では、「公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない。」とされている。公益目的事業は、不特定多数の者の利益の増進に寄与すべきものであり、公益法人は可能なかぎり低廉な対価を設定したり、受益の範囲を拡大したりすることにより収支相償を満たすことが求められている。留意すべきは、単年度において収支を均衡させなければならないということではなく、中長期的に公益目的事業に係る収入が公益目的事業に費消されることが求められている点である。ある年度において、公益目的事業にかかる費用が収益と同額以上であれば、収支相償は達成されているが、収益が費用を上回る状況であっても直ちに収支相償を満たしていないと判断されるわけではない。公益法人が次年度以降の公益目的事業拡充のための特定費用準備資金等として計画的に積み立てる等により、中長期的には公益目的事業へ充てることが確認できれば、収支相償の基準は満たすこととなる。収支相償は、計算上は経常収益と経常費用とを把握して差し引きする。収支相償の計算には、2段階ある。第1段階では、公益目的事業の経常収益・費用のうち特定の事業の収益・費用を公益目的事業ごとに把握し、それぞれの合計を第1段階の経常収益と経常費用として比較する。第2段階では、第1段階の「公益目的事業に係る経常収益(経常費用)」に「公益のためのその他の経常収益(経常費用)」を加え、公益目的事業会計に属するすべての経常収益・経常費用を求め、これに所定の調整項目を加減算して、公益目的事業会計全体の収支で判定する。
(金子良太)