収益事業課税

 公益法人等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課さないこととしている(法人税法7)。この収益事業とは、販売業、製造業その他特掲34業種に係る事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう(法人税法2⑬、法人税法施行令5)。これにより、公益法人等に対する法人税は、民間営利法人の事業活動と競合関係が認められるような場合等について、課税上の不均衡が生じないよう配慮するため、課税対象とする収益事業34業種を特掲し、その収益事業から生じる所得に対してのみ課税していることから、「収益事業課税」という通称が使用されている。つまり、収益事業課税は、従来非課税であった公益法人等の非営利活動のなかから課税対象事業を抽出する手法として採用されたものであり、公益法人等の本来の事業目的から非収益事業として非課税とする考えではない。また、収益事業の該当性について、最高裁の判決では、①事業に伴う財貨の移転が役務等の対価の支払いとして行われる性質のものか否か(対価関係の有無)、②当該事業が公益法人等以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か(競合関係の有無)等の観点を踏まえたうえで、③当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断する旨の法令解釈が示されている。このように、収益事業に該当するか否かは、明確な形式要件を規定しているのではなく、各々の事業に係る定性的な要件にとどまり、主として③の諸事情を考慮して検討することになるため、租税行政庁と納税義務者との間で判断が異なることも考えられる。なお、公益認定法の収益事業等は、公益目的事業以外の事業と定義(公益認定法5Ⅰ⑦)しており、類似する用語ではあるが、法人税の収益事業課税の対象となる収益事業の範囲と相違している。
(苅米 裕)