社会保険診療報酬

 社会保険診療を担当する医療機関に対して支払われる報酬、診療報酬である。医療法人および医業または歯科医業を営む個人において社会保険診療報酬がある場合に、その受けるべき金額が5,000万円以下であり、かつ、その各事業年度の総収入金額が7,000万円以下であるときは、所得金額の計算上、概算による経費の損金算入が認められる(租特法26、67)。この場合の概算経費は、①2,500万円以下の場合72%、②2,500万円超3,000万円以下の場合70%、③3,000万円超4,000万円以下の場合62%、④4,000万円超5,000万円以下の場合57%と、社会保険診療報酬の金額に応じて、その金額の一定割合を乗じて算定される。また、医療法人または一定の医療施設に係る事業を行う農業協同組合連合会および医業または歯科医業を営む個人の事業税に係る所得金額の計算上、社会保険診療報酬に係る収入は医療機関の総収入金額等に算入されず、社会保険診療に係る経費も当該医療機関の必要経費等に算入されないこととされている(地方税法72の23、72の49の12)。さらに、社会保険診療は、上記の所得税および法人税、事業税、住民税に係る特例のほかに、消費税において非課税取引とされている。税法上の各種特例措置の対象となる社会保険診療とは、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)、地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)、私立学校教職員共済法(昭和28年法律第245号)、母子保健法(昭和40年法律第141号)、児童福祉法、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)の規定に基づく療養の給付、更生医療の給付、養育医療の給付、療育の給付または医療の給付のほか、生活保護法の規定に基づく医療扶助のための医療、介護扶助のための介護もしくは出産扶助のための助産、または、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進ならびに永住帰国した中国残留邦人等および特定配偶者の自立の支援に関する法律に基づく医療支援給付のための医療その他の支援給付に係る一定の給付もしくは医療、介護、助産もしくはサービスなどをいうものとされている(租特法26Ⅱ、地方税法72の23Ⅲ)。社会保険診療報酬は、医療機関から社会保険診療報酬支払基金に対して請求が行われ(レセプトの提出)、その請求が適正かどうかに係る同基金の審査(レセプトの審査)を経て医療機関に支払われる。
(上松公雄)