社会福祉法人会計

社福法上、すべての社会福祉法人は、社会福祉法人会計基準省令に従い、会計処理を行うことが義務づけられている(社福法45の23)。社会福祉法人は、原則として、法人全体、事業区分別、拠点区分別に、資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表の3つの計算書類を作成する必要がある。これらの計算書類については、注記を付すとともに、附属明細書および財産目録を併せて作成し、毎会計年度終了後3か月以内(6月30日まで)に所轄庁へ提出しなければならない。
社会福祉法人会計の仕組み

社会福祉法人は、国とともに国民のセーフティーネットを支える重要な社会的資源である。このため社会福祉法人に対しては適正な社会福祉事業の遂行が求められ、強い公的関与が求められる。このような公的な関与を適切かつ効率的・効果的に実現するための社会福祉法人の財務会計制度として、行政報告を目的とした特別の会計制度が設定・発展してきた。特に社会福祉基礎構造改革以降、行政以外の利害関係者等に対する経営の透明性の確保も会計の重要な役割になってきた。社会福祉法人の会計制度の変遷については、次表のようにまとめられる。
年月 会計制度 備考
昭和25(1950)年8月25日 「授産事業の経理について」(社乙発第135号) 〈授産事業経理要領〉 戦後の復興に当たり生活困窮者等に対する授産事業(保護授産・社会事業授産)の適正な実施・刷新を図るため、会計の取扱いを明確にした。
昭和28(1953)年3月18日 「社会福祉法人の会計について」(社乙第32号) 〈社会福祉法人会計要領〉 戦後復興に向け、経済安定本部(のちに企業会計審議会)で「企業会計原則」が新たに制定されたことを受け、社会福祉法人についても会計基準を制定。 内容は企業会計原則を準用したもの。
昭和51(1976)年1月31日 「社会福祉法人が経営する社会福祉施設の経理規程準則の制定について」(社施第25号ほか) 〈経理規程準則〉 措置制度の広範囲な発展や社会福祉法人の増大を背景に、不適正な会計自己等の防止を目的。複式簿記の徹底。 官庁会計の資金概念(正味運転資金)に基づく収支計算。 措置費支弁の顚末を明瞭にするため、施設会計と本部会計を厳格に区分。
平成12(2000)年2月17日 「社会福祉法人会計基準の制定について」(社援第310号)
〈旧社会福祉法人会計基準〉
社会福祉基礎構造改革に対応して法人の自主的な経営努力を図る会計(業績=事業活動計算の導入)介護保険事業(指導指針)や病院(重症心身障害児施設等を含む)、介護老人保健施設、授産施設等の事業はそれぞれ別の会計基準が適用される。
平成12(2000)年3月10日 「指定介護老人福祉施設等に係る会計処理等の取扱いについて」(老計第8号)
〈指定介護老人福祉施設等会計処理等取扱指導指針〉
介護保険の基準省令(会計の区分、記録の整備)の規定に対応するための取り扱いを規定。社会福祉法人だけでなく営利法人、医療補運、NPO法人などに対しても適用。
平成13(2001)年3月29日 「授産会計基準の制定について」(社援発第555号)
〈授産会計基準〉
製造活動(=工業簿記)の対象となる授産事業について、製造原価明細等も含めた計算書類等の作成ルールを明確にするための特別の会計基準。
平成18(2006)年10月2日 「就労支援等の事業に関する会計処理の取扱について」(社援発第1002001号)
〈就労支援事業会計処理基準〉
障害者自立支援法(その後障害者総合支援法)の制定に対応した授産会計基準の見直し。
平成23(2011)年7月27日 「社会福祉法人会計基準の制定について」(社援0727第1号ほか)
〈新社会福祉法人会計基準〉
社会福祉法人が行うすべての事業に共通に当てはめられる会計基準(一元化)。
法人全体の財務状況の解明、経営分析を可能にするとともに、外部への情報公開にも資することなどが目的。
公益法人制度改革を踏まえ、公益法人会計基準に規定される新たな会計処理も導入。
平成28(2016)年3月31日 「社会福祉法人会計基準」(平成28年厚生労働省令第79号)
〈会計基準省令〉
「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて」(社援発0329第33号ほか:局長通知)
「社会福祉法人会計基準制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」(社援基発0329第3号ほか:課長通知)
社会福祉法人制度改革に対応し、社会福祉法人の透明性の向上を目指す。内容は新社会福祉法人会計基準を踏襲。
具体的な運用や留意点については、局長通知や課長通知に委任。
 
(千葉正展)