社会福祉法人

 社福法(以下、法)22の規定に基づき、社会福祉事業を行うことを目的として、法の定めるところにより設立された法人である。社会福祉法人が制度化されたのは、昭和26(1951)年に制定された社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)によってである。制度化までの状況をみると、第2次世界大戦までの日本の民間社会事業は、主として個人ないしは団体によって担われてきた。そのなかには旧民法34による公益法人の許可をえて法人となったものもあった。しかしながら、戦後新たに社会福祉事業の制度が構築されていくなかで、民法の公益法人制度では法人の管理機関の機能がきわめて簡易にすぎ、社会的信用においても、社会福祉事業の健全性を維持するうえにおいても遺憾な点があるとされ、社会福祉事業を担う経営主体としては不十分だと考えられた。昭和25(1950)年の社会保障制度審議会勧告において「民間社会事業に対しても、その自主性を重んじ、特性を活かすとともに、特別法人制度の確立等によりその組織的発展を図り、公共性を高めることによって国及び地方公共団体が行う事業と一体となって活動しうるよう適当な措置を採る必要がある。」とされた。このため戦後の新たな社会福祉事業を担うにふさわしい特別の法人制度として社会福祉法人が制定されることになった。
 社会福祉法人の設立には、所轄庁による認可が必要である。社会福祉法人の所轄庁は、原則として法人の主たる事務所が所在する都道府県とされており、法人が行う事業が法人の主たる事務所の所在する市の区域を越えない場合は当該市、また法人の行う事業が2以上の地方厚生局の区域にわたったうえで、特定の要件を満たす法人は厚生労働大臣となる。社会福祉法人の設立要件については、法31の規定に基づき、社会福祉法人を設立しようとする者が、定款に少なくとも法31①〜⑮に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続きに従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならず、法34の規定に基づき、社会福祉法人の主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する。また法25により法人は社会福祉事業を実施するために必要な財産を有しなければならないとされている。 社会福祉法人の実施事業については、少なくとも1以上の社会福祉事業を行わなければならない(同法22)。また経営する社会福祉事業の実施に支障のない範囲で、公益事業(社会福祉事業以外の公益を目的とする事業)または収益事業(その収益を社会福祉事業もしくは公益事業[同法2Ⅳ④に掲げる事業その他の政令で定めるものにかぎる。]に充てることを目的とした事業)を行うことができる(同法26)。公益事業および収益事業はその経営する社会福祉事業に対して従たるものでなければならないとされる。また第1種社会福祉事業を経営できるのは、原則として国、地方公共団体および社会福祉法人とされている(同法60)。
 社会福祉法人の事業経営の原則は、法24の規定において「社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上および事業経営の透明性の確保を図らなければならない。」とされている。さらに、法24Ⅱに基づき、社会福祉法人は社会福祉事業および公益事業を行うにあたっては、日常生活または社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料または低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならないとされている。さらに法61の規定において「国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者は、それぞれの責任を明確にしなければならない。」として事業経営の準則がつぎの①〜③のとおり定められている。①国および地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、またはこれらの者の財政的援助を求めないこと。②国および地方公共団体は、他の社会福祉事業を経営する者に対し、その自主性を重んじ、不当な関与を行わないこと。③社会福祉事業を経営する者は、不当に国および地方公共団体の財政的、管理的援助を仰がないこと。
 法人の機関については、法36の規定に基づき、評議員、評議員会、理事、理事会および監事を置かなければならないとされる。また社会福祉法人は法36Ⅱの規定に基づき、定款の定めによって、会計監査人を置くことができることとされ、法37の規定に基づき、特定社会福祉法人(その事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人をいう。)は、会計監査人を置かなければならないとされる。 社会福祉法人の監督については、法56の規定に基づき、所轄庁は、法の施行に必要な限度において、社会福祉法人に対し、その業務もしくは財産の状況に関し報告をさせ、または当該職員に、社会福祉法人の事務所その他の施設に立ち入り、その業務もしくは財産の状況もしくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができるとされている。社会福祉法人が、法令、法令に基づいてする行政庁の処分もしくは定款に違反し、またはその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、改善措置の勧告(同法56Ⅳ)、改善措置の命令(同法56Ⅵ)、業務停止命令または役員解職勧告(同法56Ⅶ)ができる。法令、法令または定款に違反した場合で、他の方法により監督の目的を達成できないとき、または正当の事由がないのに1年以上にわたって事業を行わないとき、法人の解散命令ができる(同法56Ⅷ)。
 社会福祉法人の会計については、法45の23により社会福祉法人会計基準(平成29年厚生労働省令第79号)等に基づき行われる。会計期間は4月1日から翌3月31日までである。社会福祉法人の情報の開示については、毎会計年度終了後3月以内に、厚生労働省令に基づき、計算書類等および財産目録等を所轄庁に届出義務があり(同法59)、定款、役員報酬支給基準および計算書類等および財産目録等の公表義務がある(同法59の2)。厚生労働大臣は「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」を構築し国民の利用に供しなければならないとされている(同法59の5)。 社会福祉法人の制度は、平成28(2016)年に改正された社福法により、制度創設以来となる大幅な改正が行われた(社会福祉法人制度改革)。その柱は、経営組織の①ガバナンスの強化(評議員会の最高議決機関、必置化等)、②事業運営の透明性の向上(財務諸表等の公開等)、③財務規律の強化(社会福祉充実残額・充実計画の制度化等)、④地域における公益的取組を実施する責務、⑤行政関与のあり方の見直し(所轄庁による指導監督機能の強化、国・都道府県・市の連携の推進等)であった。令和2(2020)年6月12日に公布された「地域共生社会を実現するための社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第52号)によって改正された社福法において、複数の社会福祉法人が連携して地域共生社会の実現に取り組む仕組みとして社会福祉連携推進法人が制度化された。施行は公布の日から2年を超えない範囲で、政令で定める日(令和4[2022]年)とされている。
(千葉正展)