ただし、SROIはその絶対値が高いからといって、必ずしも高い評価が与えられるものではない。なぜなら、SROIは社会的便益の範囲をどの程度広く見積もるか、あるいは貨幣換算の代理指標をどのように設定するかによって、その数値が大きく変動し、そのため、SROIは客観的あるいは普遍的な価値水準をあらわすものではなく、利害関係者が合意した範囲と条件のなかで、社会的価値を試算しているものということになるからである。従って、SROIを算出するにあたっては、その結果を利用したいと考えている利害関係者との間で交渉を行うことにより、評価対象とすべき社会的価値の共通認識をえておくことが重要になる。
(馬場英朗)