社会的経済

 経済に関する一種のセクター(部門)であり、フランスが発祥とされている。フランスにおいては、当初よりセクターとして認知されていたのではなく、社会的経済を構成する各組織に関する法令が19世紀末より1901年の結社自由法(アソシアシオンの自由に関する法律)まで順次、制定され、各組織は個別に法的認知を受けるようになっていた。その後、ミッテラン政権下の1981年12月25日政令において、社会的経済省庁連絡委員会(DIES:Délégation Interministérielle à l’ÉconomieSociale)が設置され、社会的経済は「協同組合、共済組合、およびアソシアシオンのうち、その生産活動により協同組合・共済組合と同列におかれるもの」と定義づけられた。また、1976年に社会的経済を代表する組織によって結成された「協同組合・共済組合・アソシアシオン全国連絡委員会(クラムカ;CNLAMCA:Comite national de liaison desactivites mutualises. Cooperatives etassociative)」が1991年に発表した社会的経済宣言でも同様である。同宣言において、社会的経済が応えるべきニーズと目的について、「安価でより良い品質の製品やサービスを入手できる消費者ニーズの実現」、「独立生産者が大企業と同等に扱われ、完全な自立を確保できるという要求の実現」、「従業員が企業経営機能を集団で実行したいという欲求の実現」、「従来の私企業では対処できない社会的ニーズを実現するため、あるいは、社会矛盾と戦うため、協同で到達しようという人々の道徳的・哲学的欲求の実現」とされた。 社会的経済に共通ルールとして、①1人1票制、②余剰資産の非分配原則、③営利性の限定があげられる。①については、出資金の多寡が議決権に反映される株式会社とは異なり、議決権は平等であり、1人につき1票であることである。②と③は、社会的経済の各組織が市場経済で製品やサービスを販売し、利益をあげたとしても、その目的が利潤追求にあるのではないことをあらわしている。すなわち、各組織があげた利益が組織成員の生活のための収入になるとしても、その少なくとも一部は、組織成員の所有や譲渡の対象にならず、当該組織の社会的目的のために再投資されることを意味している。
(伊佐 淳)