社会監査

 企業の環境への配慮、従業員の待遇、会計の透明性、寄付などを含む慈善的活動、従業員のボランティア活動などの社会的責任や社会に対するインパクトを測定するもので、倫理的監査ともいわれる。社会的企業を含む非営利組織に対する評価方法の1つとしての社会監査の起源は1950年代にさかのぼることができる。さらに、1980年代には、socialaudittoolkitがつくられ、ヨーロッパにおけるコミュニティ組織のプロジェクトの評価に使用された。スコットランドを中心に提唱され、1990年代に入って実施されるようになった。その内容は、「組織が自らの社会的目的に照らして組織の実績を勘定し、その実績を報告す る プ ロ セ ス」(Pearce, J.A[. ピ ア ス]、1996)と定義される。また、2000年には、イギリスで、社会監査の実施と普及をすすめるネットワークであるSAN(Social Audit Network)が形成された。SANによると、社会監査がプロセスを裏付け、検証が効果的で活動の改善に結びつくために、キーとなる以下の8つの概念を示している。それは、①社会的目的(ミッション)の明確化、②社会監査の機関における評価範囲の確定、③主体となるステークホルダーの参加と協議、④関連する情報や証拠の範囲の確定、⑤ターゲット、ベンチマーク、外的基準による他組織との比較、⑥監査結果をどのようにしてステークホルダーに報告し議論するのかの提示、⑦社会監査が独立性のある主体によってなされるかどうかの証明、⑧組織の通常のプロセスのなかへの社会監査の埋め込みの確保、といったものである。さらに、社会監査のプロセスとして、①当該組織が他組織とどのような差別化をしたいのかの確定、②差異をどのようにして実証的に説明するのか、③パフォーマンスとインパクトがどのようなものかに関する情報の提供、④③の実証がどの程度確かなものかの証明、となっている。イギリスでは、SROI(Social Return on Investment)などの数量的な評価手法が開発されているが、その評価にはコストがかかり、市民社会組織の評価手法として、社会監査が広く行われている。
(金川幸司)