社員

 社団または社団法人の構成員のことを指す。この場合の社員は法律用語であり、一般的な用語としての会社員という意味の社員とは異なる。社団法人の社員は株式会社の株主に類似する点も多い。非営利法人のうち社団法人となる組織は、一般社団法人、公益社団法人、特定非営利活動法人等である。社団法人でない非営利法人は財団法人であり、財団法人に社員は存在しない。社員は、法人の設立からその後の基本的な法人運営について担っていくという役割があり、そのため法人に対して一定の義務と権利を有することになり、各法人の成立について定める法令において社員の権利と義務が定められている。社員は法人から会費徴収の義務を課されることがほとんどである。株式会社の株主が、株式の引受額を限度としての出資義務以外に何ら義務を課されていないことと比較すると、社員は法人への出資義務はない一方で、法人の経費を支払う義務を負う(一般法人法27)という点が、両者の大きく異なる点である。
 社員は法人に対してさまざまな権利をもつ。この権利は大きく分けると自益権と共益権に大別される。自益権は、社員自身のために認められた権利であり、剰余金配当請求権と残余財産分配請求権がその中心になる。しかし非営利法人の場合は、剰余金配当請求権や残余財産分配請求権に法令や定款で制限を加えていることが多く、この点において株式会社の株主と異なる。共益権は、社員がその法人の経営に参加することを目的とした権利であり、社員はこれを法人の利益のために行使すべきものと考えられている。共益権には、社員総会の議決権(計算書類の承認、役員の選解任、定款の変更、解散決議、合併の承認等)を中心に、社員総会招集権、決議の取消しを訴える権利、議案の提案権、役員等の解任請求権などさまざまなものがある。この共益権は、株式会社の株主に類似する点も多い。社団法人の理事および監事が善管注意義務を負い損害賠償責任を負う可能性があることと比較すると、社団法人の社員は法令上これらの義務および責任を基本的には負わず、この点において株式会社の株主と類似する。なお、一般的には社員のことを会員と呼称することも多いが、社員と会員は同義語ではない。たとえば一般財団法人や公益財団法人における賛助会員は社員ではない。また一般社団法人や公益社団法人が会員の種類を「正会員」、「賛助会員」、「準会員」などに区別している場合があり、この場合、どの種類の会員を社員とするかは定款で定めることになる。
(居関剛一)