社員は法人に対してさまざまな権利をもつ。この権利は大きく分けると自益権と共益権に大別される。自益権は、社員自身のために認められた権利であり、剰余金配当請求権と残余財産分配請求権がその中心になる。しかし非営利法人の場合は、剰余金配当請求権や残余財産分配請求権に法令や定款で制限を加えていることが多く、この点において株式会社の株主と異なる。共益権は、社員がその法人の経営に参加することを目的とした権利であり、社員はこれを法人の利益のために行使すべきものと考えられている。共益権には、社員総会の議決権(計算書類の承認、役員の選解任、定款の変更、解散決議、合併の承認等)を中心に、社員総会招集権、決議の取消しを訴える権利、議案の提案権、役員等の解任請求権などさまざまなものがある。この共益権は、株式会社の株主に類似する点も多い。社団法人の理事および監事が善管注意義務を負い損害賠償責任を負う可能性があることと比較すると、社団法人の社員は法令上これらの義務および責任を基本的には負わず、この点において株式会社の株主と類似する。なお、一般的には社員のことを会員と呼称することも多いが、社員と会員は同義語ではない。たとえば一般財団法人や公益財団法人における賛助会員は社員ではない。また一般社団法人や公益社団法人が会員の種類を「正会員」、「賛助会員」、「準会員」などに区別している場合があり、この場合、どの種類の会員を社員とするかは定款で定めることになる。
(居関剛一)