児童福祉

 児童福祉法では、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」(児童福祉法1)とされており、平成元(1989)年に国際連合が採択した「児童の権利に関する条約」における児童の最善の利益を考慮することの理念を明確化している。児童福祉において重要なことは、その対象を18歳未満の子どもだけではなく、その保護者、家庭、地域までが含まれることである。近年では、「児童福祉」という用語に代わって、「子ども家庭福祉」という言葉が用いられるようになり、子どもの福祉を実現するためには、子どもの生活の基盤となる家庭や地域を含めて考えるようになっている。児童福祉における子どもの権利には、子どもであるがゆえに保護や援助を受けることにより効力をもつ「受動的権利」と、人間として主張し行使する自由をえることによって効力をもつ「能動的権利」がある。受動的権利とは、子どもは成人と比較して、ハンディキャップを負っており、非主張者であり、非生産者である。子どもの初期にあるほど親、大人から愛され、育てられ保護される受け身の存在であり、社会からも見守られ、発達の基盤を支えられる受動的権利がある。能動的権利とは、子どもである前に人間として主張し、追求する権利ももち合わせていることである。権利を受容するだけではなく、権利を行使する主体でもあるという考え方である。戦後、日本の児童福祉は、子どもは弱いものとしての保護的な観点が強かったが、近年では子どもの権利を尊重し、ウェルビーイングという人権擁護と個の自立を支えることが重視されるようになっている。
(小口将典)