指導監査

 社福法、介護保険法、老人福祉法等に基づき、社会福祉法人、介護保険施設、有料老人ホーム等の自主性および自律性を尊重し、関係法令または厚生労働省等の通知に定められた法人として遵守すべき事項について運営実態の確認を行うことにより、適正な法人運営と福祉事業の健全な経営の確保を図ることを目的に、都道府県ないし市町村等の所轄行政が行う「必要な助言、指導」のことである。社会福祉法人、介護保険施設、有料老人ホーム等はおもに障害者や児童、高齢者等の社会的弱者を対象とした福祉サービスを提供しており、公的な優遇処置も受けている。一方で、平成12(2000)年に介護保険法が施行されて以降、事業運営に携わる有資格者不足、施設での事故、介護保険料水増し請求等法令違反や大きな不正が後を絶たず、指定の取消し等の行政処分も増加している。そのため、平成18(2006)年には介護保険施設における指導と監査の目的の明確化が図られたり、平成29(2017)年には社会福祉法人について、法人の自主性・自律性を前提とした指導監査の効率化や重点化が図られた。指導監査は、制度管理の適正化と福祉サービスの質の一層の向上実現のために実施される指導と、不正請求や指定基準違反に対する改善のために機動的に実施される監査に分けられる。介護保険法に基づく指導はさらに集団指導と実地指導に分けられる。集団指導は介護事業者を1か所に集めて、制度に関する指導、注意喚起が必要な事項や好事例の紹介、法律の改正による指導等が集団で行われる。社会福祉法人では講習会等という。実地指導(社会福祉法人では一般監査という。)は、個別の事業者に対し行政担当者が直接訪問して定期的に実施されるもので、事業者が用意した書類や当日のヒアリングをもとに、おもに設備や運営に関して基準を満たしているかを検査する。その結果、軽度な改善で済む場合は改善報告書の提出を求められ、改善事項が判明した場合は改善勧告を受ける。実地指導(一般監査)において、特に重大な法令・基準違反や悪質な不祥事が認められる場合には監査の対象となる。社会福祉法人では特別監査という。監査(特別監査)は、事前通告なしに随時実施される。改善勧告が出されその後も改善がみられない場合は、改善命令や指定の効力の全部または一部停止(業務停止命令)が行われる。それでも改善されなかったり、引き続き指定を行うことが不適切と判断された場合には、指定の取消し(解散命令)が行われる。
(船越洋之)