私的流用

 法人役員の違法行為の類型の1つである。私的流用は英語では、divertionという。法人の資金を、法人役員が私的に流用すれば、業務上横領となる。刑法(明治40年法律第45号)では10年以下の懲役となる(刑法253)。私的流用には多種の類例があるが、たとえば、第三者から法人に対して業務委託費等を水増し請求させ、その差額を着服した場合には、横領(同法253)および背任(同法247)となり、これも私的流用である。取引先への架空発注を行い、その代金を着服すれば、背任(同法247)となり、これも私的流用である。私的流用は、法人の資産や資源を、役員個人あるいはその親族、関係者の利益のために流用、費消することをいうものである。理事が法人の事業執行に際して、法人の意思決定と異なった費途に資産や資源を支出する行為も、時として発生するが、この行為は、私的流用というよりは、役員としての義務違反、すなわち、任務懈怠あるいは善管注意義務への違反である。
(早坂 毅)