指定管理者制度

 公の施設について民間の事業者等に運営を任せる等の方法により、民間が有するノウハウを活用し住民サービスの質の向上を図るという制度である。平成15(2003)年の自治法の改正により同制度が盛り込まれたことから急速に全国に普及した。令和元(2019)年現在、全国で76,000以上の施設に導入されており、そのうちの4割の施設で民間企業等(株式会社、NPO法人等)が指定管理者に指定されている。一般的に「公共施設」と呼ばれる公の施設は、地方公共団体が住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設である。これらの施設の管理は、かつては自治法244の2Ⅲの規定により第三セクターなどの地方公共団体が出資する法人や公共団体、公共的団体に委託先がかぎられていた。しかし平成15年の同条の改正によりこの制限が撤廃され、公の施設の管理主体が民間事業者や非営利法人等に広く開放されることとなった。指定管理者制度を導入するには、地方公共団体において指定の手続きや管理の基準、業務の範囲などを条例で定める必要がある。この条例の内容に基づき、議会の議決を経て指定されることで、当該指定管理者が公の施設の管理をすることが可能となる。指定を受けた事業者には当該公の施設の利用許可の権限が付与され(同法244の4Ⅰ)、利用料金を自らの収入として収受することもできるようになる。指定管理者制度の目的は、民間事業者の活力を活用することによって住民サービスの質の向上を図り、施設の設置目的を効果的に達成することにある。運用にあたっては、指定管理の選定がたんなる価格競争になってしまわないこと、適切かつ安定的な運営が可能となるよう、ある程度長期の指定期間を設定すること、管理する公の施設の老朽化に伴う維持管理の費用負担の問題、大規模災害時に公の施設が避難所となった場合の指定管理者と地方公共団体の適切な役割分担などに留意する必要がある。
(澤田道夫)