慈善寄附金控除(米)

deductibility of charitable contribution
 連邦所得税では、特定の慈善団体に寄附を行った場合には、その寄附を行った納税者において慈善寄附金控除として所得控除を認めている。現金による寄附については、その寄附した額が慈善寄附金額とされ、財産による寄附を行った場合には、基本的に、その寄附を行った時点におけるその財産の公正な時価が慈善寄附金額となる。しかし、連邦所得税は、寄附を行った場合における寄附の相手先を2種類に大別したうえで、慈善寄附金に係る所得控除限度額を設けている。個人である納税者が、公的慈善団体等に対して寄附を行った場合には、その納税者の調整後総所得金額(AGI)の50%が所得控除限度額であり、私立財団に対して寄附を行った場合には、その納税者のAGIの30%が所得控除限度額とされる。そして、2018課税年度以降、個人である納税者が、公的慈善団体等に対して現金による寄附を行った場合の所得控除限度額は、AGIの60%に引き上げられた。なお、寄附を行った場合、連邦所得税において所得控除を適用しながら、州税や地方税においても所得控除や税額控除を適用できることがある。慈善寄附金のこうした扱いは、連邦所得税と州税または地方税の間で、租税便益を二重に享受しているものと判断された。そこで、2018年8月27日より後に寄附を行った場合には、州税または地方税において適用を受けた(または適用が予期される)租税便益の額だけ、連邦所得税の計算上、慈善寄附金控除を減額させることとした。州税または地方税における租税便益の額とは、税額控除の場合は、その税額控除額に相当する金額、所得控除の場合は、その所得控除額が寄附を行った現金の額または財産の公正な時価を超えるときの、その超過額である。なお、州税または地方税において税額控除が適用される場合、税額控除額が寄附した現金または財産の額の15%以下であるときは、連邦所得税の計算上、慈善寄附金控除を減額させる必要はない。連邦所得税の計算上、減額された分の慈善寄附金の額は、州税または地方税を納付したものとみなされ、連邦所得税の計算上、州税および地方税として所得控除の額に含めることが可能である(ただし、2017年の減税・雇用法[TCJA]により、連邦所得税における州税および地方税の所得控除限度額は10,000ドルとされている。)。連邦所得税において慈善寄附金控除を適用するためには、納税者の課税年度の末日までに寄附を行わなければならない。つまり、納税者の会計処理の方法にかかわらず、寄附として現金の支払いまたは財産の引渡しを行わなければ、所得控除を適用することはできない。連邦税における慈善寄附金控除について、寄附を行った課税年度に所得控除を行うことができなかった場合の控除不足額の繰越し期間は、翌課税年度以降、連続した5課税年度までとされている。なお、控除不足額の繰戻しは認められていない。ここで、州税における代表的な慈善寄附金の例として、アリゾナ州の慈善寄附金税額控除を取り上げる。アリゾナ州の慈善寄附金税額控除は、税制適格慈善団体に対する寄附と税制適格里親慈善団体に対する寄附という、2つの還付不能な個人所得税額控除で構成されている。税額控除額は、いずれの場合も、その寄附を行った額に相当する金額であるが、税額控除に限度額が設けられており、夫婦合算申告の場合、前者に係る税額控除限度額は800ドル、後者に係る税額控除限度額は1,000ドル(単身者申告、夫婦別算申告または特定世帯主申告の場合は、各々400ドル、500ドル)である。アリゾナ州では、ある課税年度に係る税額控除について、翌年の4月15日までの寄附を認めている。そのため、内国歳入庁の慈善寄附金の適用期限と、アリゾナ州の慈善寄附金の適用期限は異なっている。しかし、アリゾナ州の慈善寄附金税額控除において、寄附を行った課税年度に税額控除を適用できなかった場合の控除不足額の繰越し期間は、翌課税年度以降、連続した5課税年度までとされており、この点は連邦所得税と同様である。
 なお、2020年に蔓延した新型コロナウイルスの影響を受けて、2020年3月27日に「コロナウイルス支援、救済、および経済保障法」(CARES)が成立した。CARESの第2205条により、個人である納税者が2020年に現金による寄附を行った場合に、確定申告上、項目別控除を適用したときは、その慈善寄附金控除の控除限度額が、従来のAGIの60%からAGIの100%に引き上げられた。控除不足額の繰越し期間については、現行制度のとおりである。所得控除の限度額であるAGIに乗ずる割合を60%から100%へ変更する改正は、2020課税年度であり、2021年4月15日までに確定申告を行う個人の納税者に適用される。
(神山直規)